Live鑑賞 ~ KIRINJI LIVE 2020 at NHKホール

2020年12月10日。

Live鑑賞 ~ KIRINJI LIVE 2020 at NHKホール


KIRINJI LIVE 2020 at NHKホール



出演:KIRINJI
堀込高樹(vo/gt/key)
楠均(dr/per/vo)
千ヶ崎学(bass/vo)
弓木英梨乃(gt/vo)

Support Musicians:
矢野博康(per/manipulator)
sugarbeans(key)
MELRAW(Sax/fl)

Guest:
YonYon、鎮座DOPENESS


<Set List>
1.明日こそは/It’s not over yet
2.今日も誰かの誕生日
3.Mr.BOOGIEMAN
4.killer tune kills me feat.YonYon
(KIRINJI, YonYon)
5.タンデム・ラナウェイ
6.恋の気配
7.非ゼロ和ゲーム
8.悪夢を見るチーズ
9.ONNA DARAKE!
10.だれかさんとだれかさんが
11.LEMONADE
12.shed blood!
(KIRINJI, YonYon)
13.「あの娘は誰?」とか言わせたい
(KIRINJI, YonYon)
14.Almond Eyes feat.鎮座DOPENESS
(KIRINJI, YonYon, 鎮座DOPENESS)
15.パレードはなぜ急ぐ
16.嫉妬
17.The Great Journey
(KIRINJI, 鎮座DOPENESS)
18.都市鉱山
19.Pizza VS Hamburger
アンコール
20.進水式
21.クレゾールの魔法
22.クリスマスソングを何か
23.時間がない


Kirinjiのライブは、2019年6月のビルボードライブ東京以来1年半ぶり。
Live鑑賞 〜 KIRINJI PREMIUM 2019 at Billboard Live TOKYO

今年は、自分でライブを見に行けるようになってから「人生で1番ライブに行けなかった1年」になった。
(中学3年以降くらいから、当時バンドブームだったこともあって、名古屋でのライブに行っていたりしたから、この30年くらいの中で)

拙ブログを見ても、2月のブルーノート東京以来、今年2回目である。
ライブ中、何度もメンバー各人が仰っていたが「開催出来て良かった!」の一言に尽きるライブであり、その上で内容もとても素晴らしいものだった。


まず最初に、個人的に初体験となる、ソーシャルディスタンスライブに関して記しておく。
・入場は時間差。入場からロビーに入ったとしてもまだ客席には入れず、客席に入るのも時間差。
・チケットのもぎりも消毒液を手にかけた上で自分でする。
・入場時にマスクのプレゼント。
・グッズ販売ももちろんソーシャルディスタンスを守ってロビー内で。
・客もよく分かっており、特に大声出してライブを楽しんだりしない。立って手拍子はアリ。
・マスクしてるから多少歌っていても分からんけど、歌うのは無しらしい。
・席は1席おき。そういう状態とはいえNHKホール超満員。当初予定されていたツアーも中止になったし、おそらく全国から皆上京して参戦しているように思われる。
・退場時も時間差。

・個人的に感じたのは、これはKirinjiのライブだったから可能なのであって、アイドルとかロック系とか、仮にポップスだったとしても、例えばaikoなんかだと1席空けたとしてもムリだろうな〜ということ。歓声あってもライブだものね。Kirinjiの場合はもともとそういう雰囲気のライブでないので。
・で、もう1つ個人的には、1席空けてのライブはアリ。理由は単純で「隣を気にせずとも良い」から。余裕をもってゆったりライブを愉しめた。だからといって、単純に主催者側は売り上げ半分なわけで、そうも言ってられないだろう。だったら入場料倍にしてもいいから、間隔空けて欲しいくらいである。


さて、何があったのかは詮索しても意味がないことだけれども、弟 堀込泰行氏が抜け、兄弟Duoからバンド体制になり、キリンジ→Kirinjiになって2013年から続いてきた現体制でのKirinjiは本日このライブをもって終了とのことである。

2013年当初は今や泣く子も黙るコトリンゴさんがバンドメンバーだったし、つい最近まで田村玄一さんもメンバーだった。去年、所属事務所も変わった。
おそらく来年以降も、総帥 堀込高樹さんを除くバンドメンバー3名もなんらかの形で関わっていきそう(と、ライブ中のMCで高樹氏も明言していた)な事を考えると、表面上は見えないいろいろな事が重なっての「バンド体制での活動終了」という事なのだろう。

そんなバンド体制での7年間を総括するライブである。
この7年間も数々の名曲を送り出してきたKirinjiが、最後に何を歌うのか。
案の定、7年を散りばめたセットリストとなった。
(筆者が見た2日目と初日との違いは、2曲目が初日「Golden harvest」、6曲目が初日「Silver Girl」、21曲目が初日「fusitive」)


アーティスト/ミュージシャンには、スタイルや楽曲を変幻自在に変えていく、まさに「芸術家」タイプの人と、基本的にはずっと同じ道を歩む人がいる。
(前者の代表例がJazz的に言えばマイルス・デイビスだったり、パット・メセニー、後者の代表例がオスカー・ピーターソン。ちなみに筆者の場合は、どちらが良い悪いはなく、どちらのタイプも支持するし好きである。)

堀込高樹という人は、間違いなく前者/アーティストタイプである。

今日もKirinjiになってからの最初の曲「進水式」から最新の曲まで演奏されたが、この7年間でこうも変化するか!をまざまざと見せつけられるものとなった。

マイルスの場合は、死の直前まで昔の楽曲をやることはなかったけれど、高樹さんの場合はそういうわけではなく、キリンジ時代の曲も演奏自体はする(ただし、弟の曲はやらないし、自分の曲もどういう線引きなのか分からないけれど、一部の曲のみで、演らない曲は絶対やらない)。
ただ、どんな曲でも、何か一仕事加えた状態で、アレンジを加えて提供される。
本日の楽曲陣も新旧問わず、様々楽しませてくれた。
(特に今年の配信ライブ以降、サポートに加わったサックス奏者MELRAW氏のサックスは今までとは違う音風景。)

兄弟時代とは絶対的に違うのは、高樹さん自体、この7年間かなりラップとJpopの融和を図っていったこと。
これがまたカッコ良く実にハマる楽曲たちで、今回のライブは男性 鎮座DOPENESS、女性 YonYonを巧みに使い分けて聴かせる。

で、堀込高樹の天才的なのは、だからといってラップ系一辺倒にいくわけでなく、例えばアイドルに楽曲提供すればちゃんとそれっぽい仕上がりになるし(negiccoに提供した「愛は光」が最たる例)、アンコールで披露された「クリスマスソングを何か」みたくクリスマスソングを書かせれば雰囲気が出るし(その昔SMAPに提供した「愛の灯」などもある)、正月ソングを書かせれば正月になる。
いったいどれだけ音楽性の幅があるんだ!となる(強いて言えばラテン系がないくらい)。
そしてそれぞれの楽曲が古くならない。

その上で変態ソングも多く、今回「クレゾールの魔法」が聴けたのは嬉しすぎた。
この曲の発表は2005年と、もう15年も前なのだけれど、今年を予見したかのような「マスクの女性は美しい」をテーマにした歌。
ただ、なかなか披露されず、もう聴けることはないのだろうと思っていただけに歓喜。
(しかし、わざわざアンコールで演るものでもないと思うけどw)

『純白のドレスより マスクが似合うね
まなざしだけでジィーっと愛を交わそう
風邪引きの女性は美しい

パーテーションを挟んで
窮屈なベッドで
点滴を受けながら
君と喋りたい』(クレゾールの魔法より)


最大で9名のミュージシャンが舞台上にいる状態というのは兄弟時代も、Kirinji出航当初でも考えられなかった事態。
カオスで、高樹氏の言葉を借りるとワチャワチャした曲なのだが、これもまた現行の高樹サウンドの一つの形。

とにかく、客観的にみる限り、1つのジャンルにはめ込むことの出来ない堀込高樹ワールドはまだまだ進化していきそうで、バンド形態で7年間かなり進化させてきたのであるけれども、それすら超越して「もっと!その時にやりたい音楽を、それを具現化できるミュージシャンを集めて創っていく」ということなのだろう。

みうらじゅん氏の言葉「ファンとはただついて行くものと見つけたり」なので、こちらとしては、ついて行って見せて頂きますよ。ということである。

なんというか、堀込高樹バンドなかんづくKirinjiは、日本版パットメセニーグループの様相を呈してきた感がある。
どんどん進化して行く音楽、バンドメンバー全員が歌う事が出来、様々な楽器が演奏できる職人集団。メセニーグループの活動が今年、核の一つであるライル・メイズの逝去によって完全に終息してしまった今、メセニーグループに期待していたような「次は何が起こるのだろう」という音楽に対するワクワク感は来年以降のKirinjiに継承された。
そんな彼らに期待するオーディエンスが、ソーシャルディスタンスで1つ1つ席の間隔が空けられていたにせよ、今宵NHKホールを満員にし、Kirinji第二章を見送った。


弟とのDuoキリンジの最後のNHKホールの時もそうだったが、彼らのライブパフォーマンスに感傷的なものはない。
歌詞で泣けてくることはあっても、まだまだ次があるのを知っているからこそ、泣く雰囲気は微塵もない。

そして全ては曲の中にメッセージを込めるのが彼らのやり方。
キリンジの時の最後の曲は、忘れもしない「悪玉」。
「マイクよこせ!早く!!」であった。
そして、今宵のKirinji終焉の最後は「時間がない」。

「サヨナラなんて『なんとなく』だね」
(「時間がない」Kirinji より)

来年こそ、目一杯ライブが見られる1年になりますように。


このブログに掲載している、過去のKirinji(キリンジも含む)ライブ一覧。
Live鑑賞 〜 KIRINJI PREMIUM 2019 at Billboard Live TOKYO
Live鑑賞 〜 KIRINJI 20th Anniversary Live「19982018」at 豊洲PIT
Live鑑賞 〜 KIRINJI Tour 2016 at 品川ステラボール
Live鑑賞 〜 KIRINJI PREMIUM 2015 at Billboard Live TOKYO
Live鑑賞 〜 Kirinji(キリンジ) at 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
Live鑑賞 〜 Kirinji(キリンジ) at ビルボードライブ東京
Live鑑賞 〜 Kirinji(キリンジ) at オーチャードホール
Live鑑賞 〜 キリンジ at NHKホール
Live鑑賞 〜 キリンジ at ラフォーレミュージアム六本木
Live鑑賞 〜 キリンジ Live at 横浜BLITZ 2011
Live鑑賞 〜 キリンジ 10th Anniversary Premium Live 2008 at 中野サンプラザ
Live鑑賞 〜 キリンジ Live at CCレモンホール 2008
Live鑑賞 〜 キリンジ live at 日比谷野外大音楽堂 2007
Live鑑賞 〜 キリンジ Live at 渋谷 C.C.Lemonホール 2006


これまで7年間のKirinji集大成アルバム

KIRINJI 20132020 (デラックス・エディション)(完全限定盤)(SHM-CD)(Blu-ray付)


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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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