幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]
2013年4月12日 金曜。
堀込兄弟としてのキリンジ最終章、最終ライブである。
僕もかれこれ10年強の思い入れも含めて、万難を排してライブへ向かった。
18時40分頃に始まり、終了は22時20分を過ぎたころ。
およそ4時間近くに及ぶ(しかもMCも殆どなし)、最後のキリンジのボーカル&ギターとしての堀込泰行を堪能させるライブとなった。
<セットリスト>
1. グッデイ・グッバイ
2. 双子座グラフィティ
3. 風を撃て
4. 野良の虹
5. ダンボールの宮殿
6. 耳をうずめて
7. 僕の心のありったけ
8. 愛のCoda
9. タンデム・ラナウェイ
10. Ladybird
11. 小さなおとなたち
12. さよならデイジーチェーン
13. ホライゾン!ホライゾン!
14. 夢見て眠りよ
15. ナイーヴな人々
16. ムラサキ☆サンセット
17. YOU & ME
18. MUSIC!!!!!!!
19. 都市鉱山
20. CHANT!!!!!
21. アルカディア
22. 祈れ呪うな
23. 早春
24. 夏の光
25. TREKKING SONG
26. 竜の子
27. ブルーバード
– Encore 1 –
28. Drifter
29. 千年紀末に降る雪は
30. スウィートソウル
31. 茜色したあの空は
32. もしもの時は
– Encore 2 –
33. エイリアンズ
34. 悪玉
僕の個人的な思い入れはさておき、第一の感想を言えば“最後までキリンジらしさを押し通した”ライブだったなと。
このブログでも幾度となく書いているが、キリンジのライブにはエンターテイメント性やサービス精神といったものは一切ない。
その意味でいけば初心者が楽しめるライブではない。
純粋な現在進行形のJ-popを聴かせるだけの、音楽職人兄弟なのである。
だから、弟でありリードボーカルである堀込泰行氏がキリンジを抜ける、しかも最後のライブというファンにとっては一大事であるにも関わらず、ライブにおいて徹頭徹尾、感傷的なモノは一切なかった。
MCもいつも通りである。「最後ですね〜」みたいなものは全然ない。飾らない。
物販も僕が入場した時にはパンフレットのみしか売られていなかった(実際には他のモノは売り切れ。最後だから少し多めに制作してもいいようなものだが、前々からキリンジはあまり物販で儲けよう!みたいな意気込みは感じられぬ)。
ただ、演奏をし続けた。そして終えた。
そして付いて来たファンはそれで大満足した、というライブである。
傍目からすると異様な光景かもしれぬ。
普通のエンターテイメント性重視アーティストからすると考えられぬ風景だ。
ここにこそキリンジの真髄であり凄さを感じる。
思えばメジャーデビューして15年強、今のアーティストにありがちなTV等のタイアップは(全然なかったわけではないが)殆どなく、新曲を出したからといってメディアに出ることもなかった。
そう、メディアに全然出ないから「シングル曲」といっても全然一般に浸透していない(だからライブ初心者も楽しめない)。
にも関わらず、武道館も成功させ、今日のこの日はNHKホール超満員、今までのライブではあまり見かけなかったがさすがにダフ屋もいた。
これは楽曲だけで人を惹き付けてきた証左である。
ライブだからといって客に「盛り上がれ〜」と煽るようなことは一切しない。
サポートメンバーを含め、手拍子を強制することもない。
お客は立ち上がってノっている人、手拍子している人、完全に立ち上がるでもなく座席部分が上がった状態の上に腰掛けて観ている人、座って観ている人。。。様々である。
皆が皆、自由に楽曲を楽しんでいる。そして満足している。
このライブスタイル。
もう一度書くが、タイアップも大きな宣伝もないのに、楽曲のみで勝負し、15年強でこのライブスタイルを作り上げたことこそが凄いと思うのだ。
有名人が好きだからといって権威付けにもならないし、兄弟もどこ吹く風だろうが、そんな楽曲達だからこそ業界内ファンが多いキリンジであった。
評論家の宮崎哲弥さんは首都大学東京教授の宮台慎司さんとの対談本の名前を代表曲の一つである「エイリアンズ」としたほどのファンであるし、この「エイリアンズ」は小田和正氏、秦基博氏といったところにカバーされるほどの名曲。
兄貴である堀込高樹氏が藤井隆氏に楽曲提供した「わたしの青い空」は東大教授が絶賛したほどの歌詞の素晴らしさ。
同業者でもユーミンはじめ、aiko、JUJU、秦基博、Mr.Childrenの櫻井和寿、ライムスターの宇多丸、YUKI、MY LITTLE LOVERのAKKO、キンモクセイの伊藤俊吾、RAG FAIR・ズボンドズボンの土屋礼央(以上敬称略)など。
最近話題としては壇蜜さんがキリンジ大好きだそうである。
恐らくこの日もお忍びで見に来ていた業界人も多かろう。
さて、そんなワケで全34曲という普通のライブでは多過ぎる楽曲を最後に披露し兄弟としてのキリンジは幕を閉じた。
もちろんファンとしてみればあの曲もこの曲もやってほしかった、、、というのはまだまだあるが、それでもそれなりにツボを押さえた楽曲を聴かせてくれたと言えよう。
まさに現代の都市鉱山を皮肉って創られた、普通に聴けばヘンな曲「都市鉱山」をあれほど盛り上がる曲に仕立てるのもキリンジならではだし、アンコール1最後の「もしもの時は」で“何かあったらいつでも呼んでよお兄ちゃん”と弟に歌わせ、しかしながらアンコール2の1曲目「エイリアンズ」で二人はエイリアンだとし、最後の最後では悪役レスラーを題材にした「悪玉」で“マイクよこせ早く”と今後を示唆する体で終わらせたところも思わせぶり且つ文学的でいい案配。
僕はというと、曲を聴きながらこの10年来の様々な出来事を思い出し何度もウルウルしてしまい、「Drifter」では涙が自然に溢れ出るってこういうことなんだなっていう自体に遭遇した。
「バンドの解散とレスラーの引退は信じるな」は大槻ケンヂ氏の名言だが、キリンジの2人、またいつかどこかでライブはあるのだろうか。10年後か20年後か。
ただのバンドの解散ではなく兄弟であるというところが事の本質としては難しいところだと思う。
もちろん色々なことを経て、また再会のライブをしてくれるものと信じたい。
そしてその反面キリンジは終わったわけではない。
高樹さんはキリンジを継続する。僕はこれらの楽曲を様々なアーティストの声で聴くことをとても楽しみにしている。
弟 泰行さんの馬の骨での活動も注視していきたいところだ。
アンコール2が終わり22時30分を過ぎても、客は帰らず、皆スタンディングオベーション。
まさに“仕方なく”といった感じで兄弟揃ってビールを持って登場。
「もう乾杯しちゃったんで。。。お帰りください」みたいな感じの事を仰り、これまた淡々と。。。
最後まで自然体の2人にまたも観客は笑いと大拍手鳴り止まぬNHKホールだった。
下は今回物販で唯一販売された「寄せ書き」と称されるパンフレット
この日の模様を収めたブルーレイ
KIRINJI TOUR 2013~LIVE at NHK HALL~ [Blu-ray]
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