Live鑑賞 〜 PAT METHENY Dream Box Solo Tour Live at BlueNote Tokyo 2024

2024年2月3日。2nd Show。

PAT METHENY Dream Box Solo Tour Live at BlueNote Tokyo 2024


PAT METHENY Dream Box Solo Tour Live at BlueNote Tokyo 2024
パット・メセニー
ドリーム・ボックス・ソロ・ツアー


Pat Metheny(g)
パット・メセニー(ギター)


メセニーを見るのはコロナ前の2019年1月ぶり。
5年ぶりということは、コロナのせいもあって、高校生の時以来メセニーのフォロワーで、来日すれば何らかの形で見に行っていることを考えると一番間隔が空いたことになる。
5年というのは短いようで長く、60代半ばだったメセニーが、ついに今年70代に突入という。

前回のライブレポ
Live鑑賞 〜 PAT METHENY “SIDE EYE” with JAMES FRANCIES & NATE SMITH Live at BlueNote Tokyo 2019


前回のライブレポにも記したように、ここ2回ほどのメセニー、つまり60代に入ってからのメセニーのライブは正直「??」な気持ちになったのは否めない。
なんだかんだで筆者も30代半ばの、まさにパットメセニーグループが隆盛を極めていた頃から見続けていて、その頃と比べたらいけないのは分かっちゃいるけれども、どうしても恐らく多くのファンは(少なくとも日本のファンは)あの当時のバリッバリのメセニーミュージックの幻影を追い求めてしまうだけに「残念!」と思ってしまうのだ。
いや、メセニーグループの一方の要であったライル・メイズが亡くなってしまった今、それを追い求めちゃいけないのは重々分かっていても、ならばそれなりのメセニーミュージックを期待するのだが、イマイチ琴線に触れないというか。
最近は音楽のおもしろさでいけば、よほど手を替え品を替えあらゆる音楽性で攻めてくるジョンスコやマクラフリンの方がおもしろいと思ってしまうのである。

で、もう一つは、それは「老い」とも関係するのかもしれないけれども。まだ10年前のオーケストリオンプロジェクトの時までのメセニーは、バリバリに弾きまくって、他のメンバーを差し置いて出ずっぱりで、こっちが「もう十分です!大丈夫です!おつかれさまです!!」と思ってしまうくらい、何回もアンコールに答えてくれたのにも関わらず、2016年のライブも2019年のライブもアンコールもそこそこに引き上げてしまうメセニーがあって、それも「??」な一因だった。

果たして。今回はどうなのか。

今回は、昨年リリースしたアルバム「Dream Box」を冠にしたツアーで、ここ最近の大都市の、ブルーノートを代表としたジャズクラブを周るものではなく、1月14日の札幌に始まって、久々に全国を巡るライブツアー。しかもソロで。
(まぁツアーへのメセニーのコメント通りにいけば「日本各地を周りたい」ということだったそうだが、その割に札幌、新潟、高崎、なぜか名古屋じゃなくて東海市、大阪、盛岡のみ。大阪に至っては1日だけ。一番西が大阪。せめて広島とか福岡とか行ったらええのに〜とか思ってしまう。)
ここまでが1月19日までで、その後はブルーノート東京で1月23日から6日間ロンカーター&ジョーダイソンとのトリオライブ、1月30日から6日間が再びソロでのライブ。

筆者は大いに迷った。
ブルーノート東京のトリオ、ソロ、どちらのライブに行くか。
何もなければ当然ながら両方見たであろうけれど、諸事情により片方しか行けない。
恐らく普通に考えてもう二度とロンカーターとの演奏を日本で見られることはないだろう。
そして、恐らくジャズのスタンダードを演奏するだろうからメセニーがドジャズを演奏する姿もそうそう見られるものではない。
そして筆者はドラマーでもあるので、若手ジョーダイソンだって見てみたい。
のだが、、、結局はソロを見ることにした。

なぜかというと、ロンカーターに至っては御年86歳。
なんとなく直感的に、メセニーがロンに気を遣って60分程度のスタンダードジャズ演奏でサラッと終わってしまうのではないかという懸念があったからだ。
そしてそうした「予想できる音楽」よりも、あくまでメセニーのフォロワーとして「現在のメセニーの音楽」を聴こうと思った、ということが一番大きい。
(ちなみに、SNS上で散見する限り、のロンカーターとのライブは、なんだかんだで80分程度は演奏したようだし、「All the things you are」とか「Someday My Prince will come」とかアンコールでは「セントトーマス」をやったらしい。それはそれで見てみたかったし、ライブ盤とか出してくれんやろうかと思う次第。)

さてさて、前口上が長くなってしまったが、いよいよドリームボックスソロツアーライブである。
ライブ前にまずはメセニー本人からのメッセージが読み上げられ、通訳までされて日本語アナウンス。(こんな試みは初めて)
そしてメセニー登場。
衣装は、シマシマTシャツじゃなかった。
やっぱりシマシマはメセニーグループの時だけのようだ。

で、まずは結論から先に書いてしまうと「ソロとしてのキャリアの集大成ライブだった」ということ。

拍手と歓声の中を登場して、ギター持って座って1秒もせずに弾き出す。
そうそう、メセニーはそうだった、とニンマリする。
たいがいのミュージシャンは、拍手を鎮めてから、ちょっと楽曲に入るまでの集中、精神統一をしたのちに演奏し始めたりするのだけれども、この人は「もうとにかく弾きたい」のである。
筆者なんかも割と楽曲に入り込む準備が出来てから演奏し始めるので信じられないのだが、本当にメセニーは座ったら速攻弾き出す。
それでいてすぐに「メセニーワールド」に変えてしまうのである。
なんだろう、明石家さんま師匠が、ステージに上がって1秒後にさんまワールドにしてしまう感じに似ている。

そして、1つのギターをずっと弾く、なんてことはこの人に関してはありえない。
アコースティック、エレクトリック、バリトンギター、ピカソギター、ギターシンセ。
あらゆるギターを弾き倒す。
のみならず、美しい曲からカントリー系、そしていわゆるフリージャズのような、メセニーのファンなら分かるであろう「ゼロトレランスフォーサイレンス」的な、ダークサイドメセニーなど、あらゆる楽曲を散りばめる。
その上で、その場で多重録音していって、一人で楽曲を作る。
最終的には、これはもう「いっぺん見てみな!」としか言いようがないのだが、オーケストリオンミニをステージに登場させて、あらゆる楽器をギターとシンクロさせて、多重録音して、一人でその場でバンド演奏。

筆者はまっったくギターを弾けないし、その機材周りに関して全く詳しくないので、そこに関しては正直に何も書けないのだが、恐らくそっち側の角度からしても驚嘆なことが詰まりまくっているだろう。

ギタリストとして上手いとかなんとかは超越して、やっぱり「アーティスト」メセニーである。

1曲目のアコギでのメセニーグループ曲のメドレー。
「Better Days ahead」や「ミヌワノ」のフレーズが出てきただけで、オーディエンスの皆は感涙ものだったろう。
バリトンギターでの「Last Train Home」もしかり。

で、全然満足だし、クオリティも高いライブではあったのだけど、やっぱりちょっと不満を申せば、チャーリーヘイデンとのデュオ作「ミズーリの空高く」からの演奏が多かったりして、やっぱり個人的にはメセニーグループ楽曲をもっとフルで聴きたかったな、というのが正直な感想。
ま、そういうのはもう少しメセニーが歳をとったあとかもね。
あとは、オーケストリオンを使った演奏も、以前はもっと壮大に長い時間かけて演奏してくれたのに、割とサクッと終わってしまった。
正味、80分くらいの演奏で、アンコールはやはりなかった。。。

ただ、他の地方公演におけるSNS上の反応を見ていると、どうやら大きな会場で長い時間がかけられるライブでは、もっといろいろ演奏したようだし、以前すみだトリフォニーホールでのオーケストリオンライブの時みたく、アンコールも何度も演ってくれたようで、どうやら「老い」のせいではなくて、単にブルーノート東京の時間制約に従っただけのように思う。本当はまだまだ演奏できる元気はあるんじゃないかと(もちろん、ツアー最終版で本当に疲れていた可能性もあるけれど)。

いや〜これは言ってもせんないことだけれども、ブルーノート東京も厳しくなっちゃったな〜と。
というのは、’90年代〜2000年代初頭にかけてのブルーノート東京ライブなんて、2ndショーは21時半始まりで、アーティストも乗ってくるとガンガン演奏しまくって2時間以上やってくれた、ということを何回も経験している。
メセニーも、一番最初にブルーノート東京に出た時のトリオ(with ラリーグレナディア&ビルスチュワート)は確実に2時間くらいやってくれた。
というか、ファーストショーもそんな感じで大サービスするので、2ndショーの開始も遅れて22時くらいに始まる、なんてこともあった。
おかげで終演が24時を過ぎることもあり、確かに終電に乗れない人も多かったろうから、それはそれで不満も出てたとは思うけどもね。
(筆者は荻窪に住んでたので、24時過ぎになろうが、問題なく帰宅出来た。当時は終電も遅かった。)

でも、それこそがJazzという音楽の魅力でもあるんだと思うんやけどなぁ。
その後、ブルーノート東京は2ndの開演時間が早まり、それでもまだまだ演奏が長引く事態に陥ったから、ミュージシャン側に「演奏時間は〜時間にしてください!」となってるんじゃないかとさえ邪推する。

夜遅くまで営業することになればスタッフの皆さんも帰れなくなったりと、さまざまな点で大変なのは分かるけれど、どうにもクリーン過ぎるような気がしてなりませぬ。
遅くに演奏が終わり、お客さんの大半が帰ってまばらな店内に、ミュージシャンたちが再び出てきて、バーで葉巻を燻らしていたマッコイタイナーに会えたり、ギターの弦を張り替えていたマイクスターンがいたり、多くのミュージシャンたちと邂逅できたのも今は昔。
(ついでに言えば、そういう場にもほぼ出てこないメセニーが唯一、演奏後に店内に現れたのはゲイリーバートンに帯同した時。あくまでサイドメンとしての参加だったのでリラックスしていたのか、普通に壁に佇んでいた。その時、唯一度だけ握手していただいたのは超貴重な体験。)

なんだかコロナを経て、もっと厳しくなった気もしたりします。

閑話休題。
とにかく、5年ぶりのメセニーは齢70前にして全く衰えのようなものは見られず、相変わらずバリバリ弾きまくっている姿がそこにあって一安心。
80でも90でも元気に演奏しているミュージシャンがいることを考えれば、まだまだメセニー老いるのは早い。
もう一花二花、びっくりするような、感動するような作品を創って欲しいです。

そしてまた10年後くらいに、再びソロで、アコギで、メセニーグループの往年の楽曲を、枯れたアレンジで見せて欲しい。

そんなことを感じたライブでした。

ミニオーケストリオンが現れたあとのステージ

’90年代以降メセニーを見続けている中で、過去、このブログに書き残しているメセニーライブ
前回のライブ。サイドアイプロジェクト
Live鑑賞 〜 PAT METHENY “SIDE EYE” with JAMES FRANCIES & NATE SMITH Live at BlueNote Tokyo 2019
現状、アントニオサンチェスとの最後のライブ。またアントニオサンチェスとの絡みが見てみたい。
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Quirtet Live at BlueNote Tokyo
ラリーグレナディアとのデュオ
Live鑑賞 〜 An Evening with Pat Metheny with Larry Grenadier Live at BlueNote Tokyo 2012
オーケストリオンプロジェクト
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Ochestrion Live at すみだトリフォニーホール 2010
2009→2010の年またぎで行ったメセニーグループライブ
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Group Live at BlueNote Tokyo 2009
ブラッドメルドーとのデュオ&カルテット
Live鑑賞 〜 Pat Metheny & Brad Mehldau Live at NHKホール 2007


現時点でのメセニー最新作

    Pat Metheny Dream Box

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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