幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]
2016年5月20日。
Pat Metheny Quirtet Live at BlueNote Tokyo
PAT METHENY
with ANTONIO SANCHEZ, LINDA OH & GWILYM SIMCOCK
パット・メセニー
with アントニオ・サンチェス、リンダ・オウ & グウィリム・シムコック
Pat Metheny(g)
パット・メセニー(ギター)
Antonio Sanchez(ds)
アントニオ・サンチェス(ドラムス)
Linda Oh(b)
リンダ・オウ(ベース)
Gwilym Simcock(p,key)
グウィリム・シムコック(ピアノ、キーボード)
メセニーは2014年10月10日すみだトリフォニーホールでのUnity Group以来。
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Unity Group Live at すみだトリフォニーホール
ブルーノートでのライブとしては、2013年5月25日のUnity Band以来。
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Unity Band Live at BlueNote Tokyo
その他で過去、このブログに書いているのは、
ラリーグレナディアとのデュオ
Live鑑賞 〜 An Evening with Pat Metheny with Larry Grenadier Live at BlueNote Tokyo 2012
オーケストリオンプロジェクト
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Ochestrion Live at すみだトリフォニーホール 2010
2009→2010の年またぎで行ったメセニーグループライブ
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Group Live at BlueNote Tokyo 2009
ブラッドメルドーとのデュオ&カルテット
Live鑑賞 〜 Pat Metheny & Brad Mehldau Live at NHKホール 2007
などがあるが、ブログに書いていないものでもブルーノートに初登場したラリーグレナディア&ビルスチュアートとのトリオライブ(ここまで数多見てきたブルーノートのライブの中でも五指に入るライブだった)を始め、ブルーノートでのライブは欠かさず見ているし、コンサートホールでのライブも’90年代の高校生だった頃から全て見てきている。
つまり、主に’90年代以降のパットの音楽遍歴を語るのに十分過ぎるほど見てきているわけであるが、その上で、今宵のブルーノートライブは、一言で言えば「パットよ、どこへ行く??」なライブであった。
というのも、今日のライブにおける方向性が見えなかったからである。
パットはここまで常に前進し続けてきた。
アーティスト/ミュージシャンというのは、大きく分けて2つあると考えていて、基本的には自分のスタイルを崩さずに、ヒット曲を織り交ぜながら「変わらずにいるアーティスト」と、常に前進し続けて「変わっていくアーティスト」。後者の代表格はさしずめマイルスデイビスだろう。いわゆる芸術家タイプ。そして間違いなくパットは後者。
オーディエンスをアッと驚かせながら、常に前進を続けていく。
ただし、マイルスみたく時にオーディエンスが付いていけなくなるようなほどに変貌し倒すというわけではなく、ちゃんとオーディエンスに寄り添い、昔の曲も織り交ぜながら、それでいてアレンジを加えて新たな試みを加えていくのがパットの特徴。
単純に過去と同じ編成で同じように曲を演奏したりはしない。
それは、上記のライブ遍歴を見ても分かる(唯一、2009→2010の年またぎライブだけはお祭り的に過去の懐古的なライブだったが)。
2000年代以降を見ても、リチャードボナとの邂逅、のちにパットの音楽になくてはならない存在となり今回も帯同しているアントニオサンチェスとの出会い、ブラッドメルドーとのコラボプロジェクト、The Way Upでの1曲だけで1時間以上という壮大なアルバムを完成させてそれをライブでやっちゃうプロジェクト、オーケストリオンプロジェクト、ラリーグレナディアとのデュオだけかと思えばそれにオーケストリオンを加えたライブ、ユニティバンドではクリスポッターという強力なサックスを音楽に加え、さらにそれにオーケストリオンまで混ぜちゃう、、、という感じで、こちらが毎度「これ以上どう成長させるの??」と心配しながらも、次のライブではさらにその上を行く音楽性の進歩でアッと言わされてきた。
「方向性が見えない」と前に書いたが、決して今まで方向性が見えたわけではなくて、次の方向性が分からなくなるほどに毎回のライブでその時点での限界点を思わせる完成度のものを見せられてきたというわけである。
さて、ここまで前置きしてやっと今回のライブに関して書ける。
この数年はユニティバンドからユニティグループへと、クリスポッターのサックスを加えたプロジェクトを前進させまくってきたパット。
それをやり切ったと考えたのか、今回シンプルな4人編成。
そして全くこちらの知らないミュージシャンでありマレーシアとオーストラリアの血を引くベースのリンダオウ、英国生まれのグウィリムシムコックを加えたとなれば、当然新プロジェクトの始動とこちらは考える(少なくとも今回の来日における煽り文はその方向性だ)。
そのつもりでブルーノートへ足を運んだ。
結果論からすると、曲目は懐メロのオンパレードであった。
まずはピカソギターでのギターインプロビゼーション。
そこからバンドが加わって「So May It Secretly Begin」、「Minuano」からアンコールの「Are You Going With Me」に至るまで、聴いたことのない曲もあったものの、基本的には「アッと言わせる」というよりは、シンプルに曲をやるだけの構成。
ハッキリ言って、これはこれで嬉しいことではある。
’80年〜’90年あたりからパットが好きな人(確かに客層的にもそんな感じであったが)にとっては、感涙もの。
ある意味では「待ってました!」なのかもしれない。
しかし、、である。こちらとしては、それはそれで嬉しいのだが、いささか拍子抜けなのだ。
なぜに、今、この編成で懐メロをひたすら弾き倒す必要があるのか。
ぼくが勝手に出した結論は2つ。
1つは、あくまで次への繋ぎ。パットのちょっとした休息とでも言おうか。
2つめは、ベースとピアノ/キーボードを鍛え上げるためのライブ。次に待つプロジェクトへの布石。懐メロで鍛え上げて、その上で次につなげてもらうため。
で、2の視点から、ベースとキーボードの2人に関して。
ハッキリ言って、今までのメセニーが連れてきた名うての名手たちに比べると、???であった。
メセニーのバンドというのは、4人も居れば、音圧は8人分くらいは普通にあった。
そういった、今までのミュージシャンたちって凄かったんだな、、というのを再認識した。
それほどに、4人いるのに音がスカスカなのである。
いや、メセニーと名手アントニオサンチェスのドラムだけで引っ張っていたと言ってもいい。
もう、ホンマに極論、そこそこ上手い学生、、くらいの感じであった。
ベースのリンダオウ。もちろん、上に書いたそこそこ上手い学生というのは冗談で、それなりには上手いに決まっているのだが、世界最高峰レベルの技術はもちろんのこと、表現力を持ち合わせたギターとドラムを前にすると音圧や表現力が何枚も落ちてしまう。
それをパットが鍛えている、ような気がした。
特に、メセニー曲の中でもぼくの最も好きな曲の1つである「Third Wind」を演奏しようとしていたのに、出だしを彼女が間違えてしまい、修正が効かず、結局メセニーとオウが演奏を止めて、アントニオサンチェスだけでリズム修正して結局「Minuano」になってしまった。
せっっかく、久々に「Third Wind」を聞けると思ったのに、それを潰されたのはぼくとしては無念の極みである。
以前にデュオでブルーノートで登場したベースのラリーグレナディアはもっと音圧も表現力もあったし、ベンウイリアムスしかり、リチャードボナに至っては世界屈指のベーシストなわけで、彼らと比較するのはかわいそうなのだが、メセニーは貧弱なアーティストを選ばないだけに、なぜに彼女なのかが疑問である。
ピアノ/キーボードのグウィリムシムコックは、オウよりは良い。表現力もある。
いかにもキーボーディストにありがちな、内向的な感じで、出す音も含めて鬼才ブラッドメルドーのミニ版といった風情。
途中、メセニーのギターと「Phase Dance」でデュオをしてくれたが、これは素晴らしかった。
何が問題かというと、バッキングに回った時。いかにも音量が少ない。遠慮せずにどんどんいってほしい。
ドラムのアントニオサンチェス先生。
もはやメセニーになくてはならない存在。
もはや局面によっては、メセニー以上の存在感を発揮し、今年は自身でアカデミー賞の音楽賞まで獲ってしまった。
今回のライブも彼がいなかったらどうなっていたか。
テクニカルで表現力も抜群。相変わらずとんでもないことを汗もかかずにサラッとこなす。
そりゃーメセニーも手放さないわけである。
サンチェス先生のセット。スネアが3台。シンバルは打面に平行で、多種多彩。チャイナすら平行につけてあるし、トラッシュ系のシンバルもおいてある。
あと1点いうならば、料金設定かもしれない。
ユニティグループやオーケストリオン込みで¥13,800でブルーノートなら満足できるが、それと同じくメセニーとサンチェスはいて、ベースとキーボードが格落ちなのに¥13,800というのはちょっとね。
時間的にはブルーノートでは異例の2時間強だったけどね。
(ただし、「Question & Answer」でのメセニーとサンチェスの壮絶なデュオは、それだけで身銭を切る価値あり)
今のキーボードとベースの状態では、今以上に発展的なことはちょっと望めないのは分かる。
オーケストリオンと合わすなどもってのほかである。
いつものライブでのメセニーだったらもっと弾き倒せるが、彼が弾きまくってしまうと付いてこれるのはサンチェス先生だけになるから力もセーブしていた。
果たして、メセニーは何を考える?
この2人を鍛え抜いてさらに新たな一手を考えているのか。
ぶっちゃけて少し書いちゃうと、今回はただの箸休めでベースの彼女はメセニーの愛人で(本気で若干そう思った 笑)ちょっと気候のいい日本に演奏旅行に来ただけなのか。
はたまた、ある程度年齢を重ねたメセニーは、他のミュージシャンにもいるように、ちょっと隠居して若手を鍛える方向性に転じたのか。
ここまで前進を重ねてきたメセニーである。これで止まらないと信じたい。
次回のライブでどう変貌しているか、見ものである。
前バンドであるユニティグループの最新作
ユニティ・セッションズ
メセニー入門編といえば、やはりStill Life(Talking)だろう。
今回演奏しようとして潰された「Third Wind」も、演奏された「So May It Secretly Begin」、「Minuano」もこのアルバムから
Still Life (Talking)
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