Live鑑賞 〜 Pat Metheny Unity Band Live at BlueNote Tokyo

2013年5月24日。

Pat Metheny Unity Band Live at BlueNote Tokyo
パットメセニー ユニティバンド Live at BlueNote Tokyo

Pat Metheny(g)
パット・メセニー(ギター)
Chris Potter(sax)
クリス・ポッター(サックス)
Ben Williams(b)
ベン・ウィリアムス(ベース)
Antonio Sanchez(ds)
アントニオ・サンチェス(ドラムス)

セットリスト
1.Solo Guitar Intro 
(played on 42-string Pikasso guitar)
2.Come And See
3.Leaving Town
4.Interval Waltz
5.James
6.The Bat
7.Signals (Orchestrion Sketch)
8.Breakdealer
<encore>
9.Are You Going With Me


去年1月以来のメセニーライブ。
前回はベースのラリーグレナディアとのデュオがメインで、さらに自身のソロ、さらにミニオーケストリオンをブルーノートのステージ上に展開し正に「目の前で音楽を創ってみせた」メセニー先生。
もうあれ以上の進化はないと思いきや、どっこい常に向上し続けるメセニー先生があれで終わるはずがなかった。


後輩の弁を借りれば「凄すぎて言葉が出ないライブ」とはこのこと。
好き嫌いは別としても、音楽を創っている人間は須らくこのライブを見ておくべき、とすら思う。


恐らく毎ステージセットリストが違うのだろうが、僕が見たライブは先ずはメセニーのピカソギターのソロに始まり、今回のユニティバンドの面々がステージに登場。
ユニティバンドのアルバムから数曲、特に「Leaving Town」はJamesと似ている曲調だが、新たな名曲誕生だろう。
ここで効いてくるのがクリスポッターのサックス。
フュージョンとJazzの間の絶妙な音色を聞かせてくれていい塩梅なのである。
そして古くからのファンを泣かす「James」、もうさんざんメセニーも弾きまくっている曲なのでメセニーは崩しにかかってくるのだが、ここでもクリスポッターが良い感じで原曲との調和を図る音色で聞かせてくれる。
たまげたのは「James」でドラムのアントニオサンチェスがソロを聞かせたところ。メセニーも酷な要求をするものだ。
曲の構成のままで、雰囲気を壊さずに叩きこなすサンチェス先生なのであった。
さらにこれまた昔のアルバム「80/81」から「THE BAT」。もうここまででも十分クオリティも高く、満足度も高いのであるが、そこからなんとまたしてもオーケストリオン。今回はオーケストリオンにバンドが加わって演奏だ。
これは前回ライブ同様、その場での完全なるインプロビゼーション。
メセニーがステージ上にセットされた打楽器&パーカッション類、グロッケン、ヴィブラホン、アコーディオン、そして音階調整されたビンを連動されたギターでその場で音を録音し、重ね、曲を創っていく。
さらにそれにバンドと自身のギターも加わって、壮大な曲に昇華されていく。。。なんてたぶんこうして字で書いても何も伝わらないだろう。
だから「音楽は見るもの」なのだ。
泉の如く湧き出るメロディーと、様々に呼応するオーケストリオンの楽器群を見ていると、パットメセニーという人はやはり天才であり、一方で以前何かのインタビューでも言っていたように「脳内に常にオーネットコールマン的なフリーな音楽が鳴っている」んだろうと思う。


本編最後は、Unity Bandのアルバムから盛り上がる高速の一曲「Breakdealer」。
そして、アンコールはプログラミングされたオーケストリオンを交えた往年の名曲「Are You Going With Me」。
メセニーはもちろん“イク”ソロを聞かせてくれるし、クリスポッターはフルートで。
涙が出てくる演奏。


サックスのクリスポッター、ベースのベンウィリアムス、ドラムのアントニオサンチェス共に今や売れっ子。
上手いのはもはや当たり前なんであるが、さてこれが初見となったクリスポッター。噂通りの凄腕である。イク所はガンガン行き、ともするとアルバムではメセニーを食っちゃうくらいのソロを取ってたりしたんだけれども、流石にライブとなると、ちゃんと引く所は引くのよね。
その辺りのサジ加減も上手い。
テナーはもちろん、バスクラもフルートも何でも吹きこなす。


亡くなった人も含め、数々のJazzの巨人たちの音楽を今やすぐに手元で聴ける時代だがリアルタイムで追ったわけではなく、そういう意味ではパットメセニーというアーティストに関しては、デビューからではないにせよ、’90年代以降は全てリアルタイムに進化を見てきたと言える(って言っても、僕が生まれる前年にキャリアをスタートさせたから、最初の15年くらいは後追いなんだけどもね)。
往年のメセニーファンは、どうしても’90年代前後のパットメセニーグループの音楽を求めてしまうのは致し方ない所だし、僕もその部分があるにはあるけれど、かと言って当時の曲もちゃんとやってくれつつ、当時からのファンを離れさせることなく進化を遂げた「今」の姿をしっかりと見せる姿は驚嘆である。


僕自身がハッキリと言えることは、2005年のアルバム「The Way Up」以降、メセニーの音楽は聴く音楽から見る音楽へと変貌したということ。
それまでのアルバムは、たまに地雷アルバムもあるが、基本的には部屋でメセニーの音楽を流した途端に空気がガラッと変わり、BGMとしても心地よく、さらに聞き込めば聞き込んだだけ味が出るアルバムであったし愛聴盤も多いが、「The Way Up」以降はあまり普段から聴く事はなくなり、むしろライブを見てアルバムの曲に目覚めるということが多くなった。
ライブを見てこそのアーティストに変わったわけである。
そして、そのライブはその度に進化を遂げ続けている。


僕はいつも思う。
次にメセニーのライブを見る時までに自分がどれくらい成長出来ているだろうと。
それほどに、メセニーは次へ、次へ。前へ、前へと進化し、変化していくアーティスト。
お客としては、これ以上に何が?!と思うのだけれど、きっとメセニーは、まだまだやりたい事が目白押しなんだろう。
次の展開を待つ。そして、こっちも次回までに少しでも何か成長していたい。



Unity Band


このバンドの発展系、Unity Groupとしてのスタジオライブ。

ユニティ・セッションズ(日本語字幕/パット・メセニー解説翻訳付き) [Blu-ray]

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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