Live鑑賞～ KIRINJI “Blue Note Tokyo Live 2022” at Blue Note Tokyo

Published 2022年3月7日

2022年3月5日。

Live鑑賞～ KIRINJI “Blue Note Tokyo Live 2022” at Blue Note Tokyo

Live鑑賞～ KIRINJI “Blue Note Tokyo Live 2022” at Blue Note Tokyo

出演：堀込高樹（ヴォーカル、ギター、キーボード）
千ヶ崎学（ベース）
楠均（ドラムス）
林正樹（ピアノ）

＜Set List＞
1.きもだめし
2.気化猫
3.曖昧me
4.手影絵
5.ローズマリー、ティートゥリー
6.狐の嫁入り
7.あの人が歌うのを聞いたことがない
8.早春
アンコール
9.first call
10.虹を創ろう
11.bar olivia

Kirinjiのライブは、2021年8月ぶり。
堀込高樹を中心とする「変動的で緩やかな繋がりの音楽集団」となってからは、年末のライブには参戦しなかったので、2度目のライブである。
そして、こういう雰囲気のハコとしては、今までもビルボードライブには定期的に出演していたが、筆者の落ち着く場所の一つ、このブログに幾度となく登場するブルーノート東京に遂に堀込高樹＆Kirinji初登場、である。
2021年5月にブルーノート東京でライブの予定が、緊急事態宣言で流れたこともあって、正真正銘の「初」。
この日もまだまだオミクロン株暴走中ではあるものの、そんなこと言ってられんエンタメ界の状況下、席の間隔を開けつつ超満員のオーディエンスであった。

さて、今回のKirinji。
「変動的で緩やかな繋がりの音楽集団」と言われてしまうと本当に曲者で、高樹氏のやりたいように如何様にも変貌できるということである。
結論から言えば「今までのキリンジ／Kirinjiとはまっったく違う形態」だった。
いや、これはもうこの2日間のブルーノート東京と3月9日のビルボードライブ大阪限定の形態ということなのだろう。

バンドメンバーからしてもその前兆はあって、去年行ったライブとは演奏者数が全然違うし、ベース＆ドラムの千ヶ崎さん楠さんはバンド編成時代のKirinjiメンバーだからお馴染みだが林さんのピアノは初。
どう考えてもアコースティック仕様の編成なので、さすがにブルーノートというハコに合わせてきた、ということなのだろう。
そして、昨年コロナで流れてしまった高樹氏が書いた絵本「あの人が歌うのをきいたことがない」を演奏するにあたっては、このメンバーこそ！ということなのだろうと思う。

そして、その予想通り、あらゆる音楽性が見え隠れする堀込高樹の世界の中でも、最近よく出てくるエレキ系やラップ系を取り入れた音楽ではなく、絵本の世界を表現することを中心とし、最新アルバムの曲を少し演奏しつつも「早春」「きもだめし」といったアーリーキリンジ時代の曲も散りばめた構成だった。

やはりハイライトは、おそらく今回だけの演奏になるんじゃないかと思われる「あの人が歌うのをきいたことがない」の完全再現。
絵本のページに合わせて組曲のように小品となった曲たちが演奏されていくのだが、当然ながら歌詞自体がストーリーになっていてしっかり見えるので、最後は泣けてもくる。
ロシアとウクライナの情勢が気になる昨今、この曲のように皆が歩み寄って「人が歌っているのを聴ける」ようになれればいいのに、とふと思ったのであった。

そして、時期的に春に照準を合わせたセトリの中でも「早春」のダイナミクスは秀逸で、4人で演奏しているとは思えぬほど。
これも今回の聴きどころの一つだった。

少しの不満としては、やはり演奏時間。
ブルーノートだから、2ステージやらねばならぬ制約があるとはいえ、アンコール含めても1時間強くらい。
盛り上がった時のメセニーやケニーギャレット、マイクスターンのように2時間やれ！とは言わないが、せめてあと数曲演奏して欲しかった。今までのKirinjiとは一味も二味も違うからこそ。
そして、林さんのピアノをもっともっとフィーチャーして欲しかったとも思うし、各人のソロパートもあっても良かったのにな、とも。

ともあれ、高樹氏の客に全く媚びない、おおよそサービス精神とはかけ離れたライブパフォーマンスは、ブルーノートだからといって変わるわけではなく、いつもの通り。
相変わらずの音楽職人ぶり。
何度も書いているように、みうらじゅん氏言うところの「ファンとは付いていくものと見つけたり」である。
次のKirinjiの変容の仕方に大いに期待。
そしてまた再びブルーノートに降臨することも期待。

筆者自身、コロナ真っ盛りになる直前、2020年2月にキャメロングレイブスのライブに来て以来、2年ぶりのブルーノートでの音浴び。
あぁ〜帰ってきたな、という気分と、早くまた世界の超一流音楽バカ（失礼！）たちの演奏をここで見たいという思いが沸沸と。
この間、名古屋のブルーノートが閉店したり、決して東京も安定しているわけではないだろうけれども、この場所は失くしてはならぬ。

なかなか後ろから見ることのできない、楠さんのドラムセット。