Live鑑賞 〜 Kirinji(キリンジ) at 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE

2014年9月23日 火曜


Kirinji TOUR 2014

Kirinji メンバー
堀込高樹/田村玄一/楠均/千ヶ崎学/コトリンゴ/弓木英梨乃
ゲストサポート 矢野博康


<セットリスト>
1.だれかさんとだれかさんが
2.夏の光
3.きもだめし
4.温泉街のエトランジェ
5.fugitive
6.手影絵
7.虹を創ろう
8.バターのように
9.狐の嫁入り
10.それもきっとしあわせ
11.黄金の舟
12.雲呑ガール
13.都市鉱山
14.ONNA DARAKE!
15.シーサイド・シークェンス~人喰いマーメイドとの死闘篇
16.嫉妬
17.ジャメヴ デジャヴ
18.ナイーヴな人々
19.もしもの時は
20進水式
<アンコール>
21.台風一過
22.Ripples(田村玄一)
23.クリスマスソングを何か
24.絶交
25.心晴れ晴れ


2013年4月13日のNHKホールで兄弟としてのキリンジに終止符を打ち、
8月11日に夢の島で開かれたのワールドハピネスでギターの弓木さん抜きでキリンジから新生Kirinjiとしてプレお披露目。
その後12月13日にオーチャードホールで弓木さんも含めたKirinji初の単独ライブ。
今年6月13日にビルボードライブ東京で今年初Live。


とまぁ、新生Kirinjiのここまでを、この1年つぶさに見てきたが、あくまでもここまではほぼ全て東京(一部大阪)。
いよいよ今日2014年9月23日より全国ツアーのライブをスタートさせる。
その一発目のライブ。



場所は渋谷のduo MUSIC EXCHANGE。
上にO-EAST、すぐ近くにO-WEST、O-NEST、O-Crest、少し歩けばオーチャードホールと、渋谷における音楽の聖地的場所。
周囲は道玄坂のラブホテル街。極めて雑多な場所である。
上のO-EASTで行われているアーバンギャルドPresentsの「鬱フェス」とやらも気になりつつ(しかも筋肉少女帯も出ているではないか)、会場へ。


音楽でも演劇でも一発目というのは、演者も探り探りだ。
しかも、今回はライブでの初お披露目という曲も多かったから、尚更多かれ少なかれバタバタ感も出ていたが、それこそがライブ。
普段はどちらかと言えば、終盤戦か最終オーラスの完成されたライブを見ることが多いので、逆に新鮮でもある。


果たして、セットリストは今現在のKrinjiにおける最良のものとなった。


基本的には8月に発売された新生Krinji最初のアルバムからの曲が主だが、一曲目からそのアルバムの中でも最も好きな曲と言っていい「だれかさんとだれかさんが」から演ってくれたのは嬉しい。
この曲はここまでのライブで披露されてないので、まさに本邦初公開である。


今までのキリンジライブのレポートでさんざん書いてきたので、今更重複するから書くのもアレだが、相変わらず楽曲を淡々と演奏するだけのライブである。
エンターテインメント要素は全くない。客を手拍子で煽ることすらしない。
MCも2回くらいか(しかもどちらもメンバー紹介という、変わらぬユルさ)。
淡々と、とにかく淡々と楽曲と歌詞のみで惹き付けて終える。
楽曲と歌詞、そして出される音の数々が堀込高樹氏のリーダーシップと手練のミュージシャンによって堂々と自信をもって繰り出されるから、ずっと聴いていられる。
そしてオーディエンスはしっかりと付いてくる。
2時間半、25曲、目一杯聴かせてくれた。
ライブハウスだからずっとずっと立ちっぱなしだったが、全然平気。まだ聴ける。


とにもかくにも新生Kirinjiに女子2人を入れた事が大正解で、特に弓木さんは終始ニコニコ、楽しそうに演奏する。
ともすると今までのキリンジを含めて皆、演者は真剣に(見ようによってはつまらなそうに)演奏するので弓木さんの表情は見ていて飽きない。
で、失礼ながら静のコトリンゴさん/動の弓木さん。陰のコトリンゴさん/陽の弓木さん、というように2人が対照的なのもベスト人選だと思う。
ヴォーカル的にもコーラス的にも幅が広がったしね。


全員が3個以上の楽器を兼任しているので色彩豊かな音楽。
コトリンゴさんのアコーディオンはKrinjiライブ初。もちろんKeyが専門でヴォーカル(メインヴォーカルの時も)。
弓木さんはエレキギター/アコギ/バイオリンにヴォーカル(メインヴォーカルの時も)。
田村さんはペダルスチールからスティールパン、ギター、ヴォーカル。
千ケ崎さんはエレベ/アコベ/シンセサイザー、ヴォーカル。
楠さんはドラム、パーカッション、ヴォーカル(メインヴォーカルの時も)。
矢野さんはドラム、パーカッション、ヴォーカル。
もちろんリーダー高樹さんもあらゆるギター、笛、ヴォーカル。
と、これだけ皆、楽器が出来るとやはりJ-Pop版パットメセニーグループである。


平成版、否、歴代最強のお風呂ソングとも言える「黄金の舟」。
これまた歴代最強の台風後の晴れ晴れ表現ソング「台風一過」。
ナイーヴな人々に“世界を美しくするのはそういう人だ”と応援する「ナイーヴな人々」。
デジタルな現代都市世界の悲哀を歌う「都市鉱山」。
(この曲なんか、作曲者本人も含めて「泣かせる曲」ではないのだろうけれど、僕は都市の空虚さや悲哀を感じて、聴いてるとなぜか泣けてくる。分かってくれる人は少なかろうが)


東大の教授が絶賛したなどということを錦の御旗にする気は毛頭ないが、国語の語彙力のない学生は、高樹氏の歌詞世界を味わえ!と言いたいほどである。
(たまさか同じ建物内でライブをやっていた筋肉少女帯の大槻ケンヂ氏といい、この日は日本の歌詞世界の巨星が2人いたことになる)


そして、素晴らしい楽曲が多かったこの日のライブの中でも「今日イチ」は、何と言っても弓木さんがヴォーカルで歌った「それもきっと幸せ」。
まさかこの曲をライブで聴けると思っていなかったからだ。
この曲は2007年に高樹さんが鈴木亜美さんに提供した曲で、
いろいろあったろう鈴木亜美さんに
“歌いたい歌がある。私には伝えたい思いがある。そのためになら不幸になってもかまわない”
と歌わせた高樹さんの奥の深さ。
宇多丸氏も号泣したというエピソードさえある、普遍の名曲である。
これを弓木さんが、鈴木さんとはまた違う歌唱で聴かせてくれた。感涙ものであった。
ライブで聴けるのは今回が最後かもしれない(個人的にはもっと演奏して欲しいが)。


今さらながら、通り一遍の応援歌や頑張れソングが多い中で、高樹さんの楽曲/歌詞というのは、婉曲的にというべきか、ストレートではなく「こういう慰め方/伝え方もあるんだよ」ということを教えてくれる。
それは上記した様にナイーヴな人々だけに対して
“世界を美しくするのはそういう人だ。世界をいっそう美しくするのが君のさだめ”“君はガラスの4番打者だけど、打席立てよ!振ってこいよ!”と言ってみたり、
“ダメな日は、早く帰って風呂に入るだけ”(黄金の舟)
と言ってみたり、
そういった意味で、現代日本の音楽界には稀有な存在。


あくまでも初日。
この先、11月のツアー最終までに楽曲はさらに進化完成していくだろう。
そして、まだまだ大昔のキリンジ曲は披露されてないだけに、現バンドでニューアレンジでの旧楽曲再現の日を大いに待ちたい。
さらに願わくば、オールスタンディングでなくて、座ってゆっくり味わいたい音楽よね。

それにしてもライブ中に高樹さんの口からローランドカークの名が出てきたが、この固有名詞が分かった人はいったい何人いたことか。

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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