Live鑑賞 〜 Pat Metheny Unity Group Live at すみだトリフォニーホール

2014年10月10日 金曜


Pat Metheny Unity Group at すみだトリフォニーホール





Pat Metheny Unity Group
パットメセニーユニティグループ


Pat Metheny
パット・メセニー(electric and acoustic guitars, guitar synth, electronics)
Chris Potter
クリス・ポッター(tenor sax, bass clarinet, soprano sax, clarinet, alto flute, bass flute)
Ben Williams
ベン・ウィリアムス(acoustic and electric basses)
Antonio Sanchez
アントニオ・サンチェス(drums and cajon)
Giulio Carmassi
ジュリオ・カルマッシ(piano,vocal,orchestrionics,multi-instrument)


<セットリスト>
1 Into The Dream(ピカソギターソロ)(pat)

chris、ben、antonio登場
2 Come And See
3 Roofdog
4 The Bat
5 Police People
6 Folk Song #1

メンバー紹介+Giulio Carmassi登場
7 Kin
8 Rise Up
9 Born
10 Genealogy
11 On Day One

pat+メンバーのDUO
12 Bright Size Life(pat+ben)
13 All The Things You Are? (pat+chris)
14 Dream Of The Return (pat+Giulio)
15 Go Get It (pat+antonio)

再び5人
16 Have You Heard

encore1
Are You Going With Me?

encore2
Pat(Baritoneguitar solo)メドレー
Phase Dance 〜 Minuano 〜 The Sun In Montreal 〜 As It Is 〜 Omaha Celebration 〜 Antonia 〜 Last Train Home

encore3
The Good Life

encore4(Pat Solo)
Beyond the Missouri Sky Medley
My Spanish Love Song〜Waltz for Luth〜First Song

encore5(Pat Solo)
And I Love Her

encore5
Breakdealer

encore6
Song For Bilbao


マイフェイバリットアーティスト、パットメセニーの今年のライブはすみだトリフォニーホールで。
このホールは、2010年に度肝を抜かれた同じくメセニーのオーケストリオンライブ以来。
メセニーのライブは去年5月24日のブルーノート、Unity Band以来。

トリフォニーホール正面にはスカイツリーがかなりデカくそびえ立つ。
画像ではデカさは分からないけど、かなりデカく見える。

今年発売した新アルバム「Kin」



この前のアルバムはあくまでもUnity Band名義であり、「Kin」になってUnity Groupとなった。
違いは、マルチインストゥルメンタル奏者 ジュリオカルマッシが加わったことと、Bandからの4人の化学変化がさらに濃密になったことで、よりダイナミクスと色彩感が加わったことである。


それをライブで表現する、というのが今回の試みであり、もっと言えばオーケストリオンも取り入れていくという、毎度のことながら聴く側の予想を何倍も上回る音楽表現/進化を続けていくアーティストがメセニーである。
(オーケストリオンについての説明は割愛します。詳細はこちら


高校1年だったかなぁ、この人を追いかけ始めてもう20数年になるが、間違いなく同時代に生きられて良かったと思えるアーティストの1人。


さて。
またしても。
またしても、伝説になろうライブをやってのけたこの日のライブ。
メセニーグループの「正装」であるボーダー、シマシマのシャツを来て登場のメセニー。


毎度毎度「もう十分です!ありがとうございやした!!」とこっちが思うほど弾きまくってくれるメセニーなのであるが、
東京での3日間のライブの〆となるこの日もまた3時間強、ほぼMCも無しで出ずっぱり(他のメンバーは休む箇所があるがメセニーは出ずっぱり)。弾きまくり。
そして、アンコールに応えて応えて応える!の計6回のアンコール。


今年、ついに御年60歳になったメセニーであるが、それを微塵も感じさせないバイタリティ。
創作意欲。
溢れ出てくるメロディーライン。
それぞれのプレイヤーとのデュオでは、サックスのクリスポッターとのデュオでJazzの側面、ベースのベンやKeyのジュリオカルマッシとは自身の曲で叙情的な側面、ドラムのアントニオサンチェスとはRock&フリーな側面、、、あらゆるスタイルを瞬時に頭をチェンジして弾き倒す。
さらにこの人がそこらのギター少年と違うところは、創作した曲をソロギターから他の楽器とのアンサンブルまで際限なく幅を広げて表現していくプロデュース能力を併せ持っていることだ。
それでもあれだけ美しいメロディーをつま弾きながら、実は頭の隅ではオーネットコールマン系のフリーな音階が鳴り響いているというのだから、一体この人の頭の中はどうなってんだろうか。


曲はデビューアルバムの曲から最新の曲まで網羅しつつ披露。
新アルバムの中ではRise Upが一番聴きたい曲で、これが聴けたのが収穫。
涙腺が緩みます。

しかし、しかし、一番涙腺が緩んだのは、やはりアンコールでやってくれたメセニー曲のソロギターメドレーかな。
それぞれの曲に思い出があって「あの時あの瞬間聴いていたな〜」って思い出すともうダメです。
メセニーの曲をソロで弾いただけのアルバムを創ってほしいと思うのはファンの勝手な願望。


他にもアンコールでは先日亡くなったチャーリーヘイデンに捧げた二人のデュオ曲メドレー「Beyond the Missouri Sky Medley」も泣けました。


昔のメセニーグループ時代の盟友たちと、今のグループのメンバーの違うところは、それぞれが一国一城の主になれているところ。
この辺が不思議なところで、昔のグループのメンバーも凄腕のはず(だってメセニーの曲を演奏出来るのだから、、)なんだけれど、ライルメイズにしろスティーブロドビーにしろ、ペドロアズナールやアーマンドマーサルにしろ他のアーティストと共演というのをあまり見かけない。
ところが、今のメンバーは皆、他のアーティストから引く手数多である。
それはもう、あれだけの腕を持ってりゃそうだわな。


クリスポッター。
むっちゃくちゃ上手い、ていう感想では平易過ぎてダメか。
テナー/ソプラノサックス、フルート、さらにギターまで。
ジャズテナーの系譜となると、ロリンズ、コルトレーン、最近ではブレッカー等々、踏襲すべきミュージシャンがいて、それ相当に「似たフレーズ」が出てきてしまうものだが、この人のソロは誰とも違う。
オリジナリティーが溢れている上に、ちゃんと「イって」くれる。
メセニーが毎度ソロの時にちゃんと「イって」くれるソロを取るから、アレ以上を求めると他のミュージシャンにはツライ作業なのだが、クリスはともするとメセニー以上に盛り上げるほどソロを取れる。
これがスゴいところ。
パットとのデュオ。「all the things you are」は今日イチと言っていいほど壮絶な出来でした。


ドラムのアントニオサンチェスに至っては説明不要。
もう超人の域であるし、叩きっぷりに派手さがない点は好みが分かれるけれども、技術的には間違いなく世界最高峰。
(左足だけで3つのペダルを楽勝踏み分けて叩き続けるからね)
僕自身がドラム屋さんなので、あれだけこの日叩いていても、まだあの人には引き出しが存在することを知っている。


個人的にはジュリオカルマッシが新人さん扱いだったのが仕方ないとはいえ、もう少しフィーチャーして欲しかったなと。
彼の独演会にさせるわけにはいかないだろうし、使い方が難しいのかもね。
(もちろん、オーケストリオンのコントロールという重要任務を任されていたけれど)
逆に言えば、彼の活用如何では、このグループはまだ幅が広がっていきそうだ。


ジュリオの1人ファーストサークル。
マルチインストゥルメンタル奏者とはこういうことだ!!



まだ、、このグループはあと一段階か二段階進化しそうな気がする。
これから70歳までの10年間、メセニーはどのような音楽をまた僕らに届けてくれるのか。
メセニーの音楽とは真剣に向き合う必要があるから、ともすると疲れる(でも、そんな複雑なことをやっていてもサラッと聴けちゃうのもこの人の音楽のすごいところ)。
だから、こちらも気合いを入れて聴き続けていきたい。


でも、最後の最後。おじいちゃんになったら(今は全然そう見えない)。
今宵のソロギターのように、小さなライブハウスで往年の曲をバリトンギターだけで爪弾いて聴かせてほしい。
本当に、ずっっっと聴いていられるから。

あまりにも余韻がありすぎて、そのまま吉祥寺のメセニー好きのオーナーKさんが経営するバー「ファーストサークル」へ。
お客さん全員が、3日間のうちどれかのライブに行っているという状態で、歓談しました。

コメントを残す

Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

アーカイブ

Produced by Get a life