さようなら!ロイ・ヘインズ師匠

御歳99歳でしたから、いずれは、、と覚悟はしていましたが、その時がきてしまいました。
ロイ・ヘインズ師匠が亡くなりました。

伝説的なジャズ・ドラマー、ロイ・ヘインズ死去

ロイのプレイに接し始めたのは中学生くらいからかな。
思い返せば、ジョンコルトレーンのニューポートジャズフェスでのマイフェイバリットシングズが最初に印象に残った演奏かもしれない。
その演奏自体は、コルトレーンやマッコイタイナーの壮絶なプレイがメインで、コルトレーンといえばエルビンジョーンズこそが正ドラマーであって、エルビンとコルトレーンの丁々発止のやりとり、猛烈にスウィングするエルビンのドラムこそが定番なんだけれど、この時のロイのプレイが独特すぎていい味出してるんですよね。一発で彼と分かる叩き方。
だからこの時の演奏は、ロイのあの叩きっぷりで良い!と思っちゃう。

個人的にはロイの凄さがめちゃ分かったのは、パットメセニーのクエスチョンアンドアンサーでのプレイ。
当時すでにメセニー大好きっ子だった筆者だけれど、メセニーグループとは全く違う、ドジャズをプレイするメセニーに、めちゃくちゃロイのドラムがハマってる。
この時すでに64歳だったロイだけれども、脂ノリまくりで、SolarやH&Hでのドラムソロは、マジで拍取れへん。
この年齢であれだけ叩きまくる(今思えば99歳のロイからすれば64歳のロイはそりゃあ若い!)ことに感銘を覚えたのでした。

なにしろ共演してきたミュージシャンたちがキラ星の如くというか、歴史的なJazzジャイアントばかり。
チャーリーパーカー、マイルスデイビス、セロニアスモンク、バドパウエル、ソニーロリンズ、ジョンコルトレーン。
歌伴としてもサラヴォーン、エラフィッツジェラルド。
そしてチックコリアやメセニーといった後輩たちともレコーディングを重ね、人間国宝というか人間世界遺産な人でした。

初めてライブを見たのは1998年かな。
その後は、ブルーノート東京に来てくれるたび、見に行き、数多くのレジェンドたちを後ろから鼓舞した彼のドラミングに見入ったものです。

人によっては、ロイのプレイは何がすごいのか分からんと思います。
その気持ち、分かります。
すんごいゲロテクで叩きまくるとか、超高速で叩くとか、そういうことではないし、かと言ってスウィングしまくってるかというとそういうことでもないし。
なんなら、スウィングしてないように聞こえる。すごく縦割りのビートに聞こえる。
ドラマーであっても、凄さの分からん人は少なくないように思います。
「こんなのマネできる」くらいに思うかもしれない。

でも、です。
他の偉大なるドラマーたちのプレイはそれこそ教則本とかにもソロを載せられたりして、技術的な面からも後輩たちに影響を与えている。
多くのドラマーが影響を与えられて、模倣されていくんですよね。
ところが、ロイのドラミングって独特すぎて、マネすると全てにおいて「ロイヘインズみたい」になってしまうのです。
マネさせなさ、がある。
個性的なドラムの極致とでもいいましょうか。

で、こういう唯一無二感こそがプロ、だと思います。
金が取れる、というか。
独特過ぎるからこそ、彼のドラミングをバックにしてフロントで演奏する人たちは気持ちいいんではなかろうか、なんて思います。
だから数多くのミュージシャンたちが彼を起用したんだと思う。

2009年のブルーノート東京でのライブ時。
ロイの楽屋に行くチャンスがあって、ご対面。
その時に「自分もドラムを叩きます」と伝えたら「演奏を続けていって欲しい」と言われました。
そして、自身の持参していたロイヘインズモデルの未使用スティックをぼくにくれたのでした。
当時、バンド活動というか、楽器にさわることすらずいぶん減っていたので、これはアカンと。
師匠の言葉がきっかけで、忙しい中、定期的にバンド練習をやって、年に数えるほどでしかないとはいえ、ドラムを続けるようになったのでした。


このスティックはさすがに使えずに手元に遺してあります。
サインをもらったCDたちとともに。
今となっては宝です。

その対面時はもう80歳を超えていたロイですが、その時も常に握力を鍛えるハンドグリップをニギニギやっていたのが印象的で、聞けば年とってからは、筋トレを欠かさずに、長く叩き続けられるように努力をしていたそうです。
だから弱々しくなったとはいえ、90代後半になってもライブ活動が出来たんでしょう。
上記したように後進のドラマーたちに影響を与えたとは言い難いロイだけれども、同世代の偉大なるドラマーたちはもう随分前に天へ召されたわけなのだから、長〜〜〜〜く叩き続けたという点では、ロイの勝ち!なのかもしれません。

もっとも、ロイはそんなこと全く考えてなくて、ひたすらに前へ前へ、若手たちとともに音楽を奏で続けただけですけれどもね。

そんな長い演奏の旅路を終えて、ついに眠ってしまった師匠。
でも、数多ありすぎる演奏の記録は永遠に生き続けていきます。
そして、超個人的には、ドラムを叩き続けるきっかけを与えてくれた師匠でした。

安らかに。
ありがとう!!!

このブログに掲載しているロイヘインズのライブ鑑賞ブログ
Live鑑賞 〜 Roy Haynes Quartet Live at BlueNote Tokyo 2007
Live鑑賞 〜 Roy Haynes Quartet Live at BlueNote Tokyo 2009
Live鑑賞 〜 Roy Haynes 85 & The Fountain of Youth Band Live at BlueNote Tokyo 2010
Live鑑賞 〜 Roy Haynes “90th Birthday Celebration” Live at BlueNote Tokyo

ロイヘインズのドラミングとの最初の出逢いとも言えるコルトレーンのニューポートジャズフェスでの壮絶な演奏
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これもよく聴いた、鬼才ローランドカークとの共演盤
「Out of the afternoon」
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メセニー、デイブホランドとのトリオ作品。メセニーのJazz名盤の一つ。
「Question & Answer」
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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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