Live鑑賞 〜 WORLD HAPPINESS 2013 at 夢の島公園陸上競技場

2013年8月11日。

WORLD HAPPINESS 2013 at 夢の島公園陸上競技場
ワールドハピネス 2013 at 夢の島公園陸上競技場

<出演者>
高橋幸宏 / 矢野顕子 / 大貫妙子 / ヒカシュー / Controversial Spark(Incl.鈴木慶一) / 清水ミチコ / 奥田民生 / TOWA TEI / GREAT3 / KIRINJI / 柴咲コウ / トクマルシューゴ / MIDNIGHTSUNS / スチャダラパー / レキシ / 大橋トリオ / salyu×salyu

WH13 SPECIAL BAND<The おそ松くんズ>
咲坂守(小林克也)・畠山桃内(伊武雅刀) / 坂本龍一 / 小山田圭吾 / 鈴木茂 / 小坂忠 / 小原礼 / Dr.kyOn / 佐橋佳幸 / 高橋幸宏 / 奥田民生 / 矢野顕子 / 鈴木慶一 / 大貫妙子 / ゴンドウトモヒコ / and more

<タイムテーブル>
12:30 大橋トリオ
12:55 Controversial Spark(Incl.鈴木慶一)
13:15 高橋幸宏
13:45 MIDNIGHTSUNS
14:05 清水ミチコ
14:30 矢野顕子
14:55 ヒカシュー
15:15 スチャダラパー
15:40 TOWA TEI
16:00 柴咲コウ
16:25 トクマルシューゴ
16:45 salyu×salyu
17:10 GREAT3
17:30 大貫妙子
18:00 KIRINJI
18:20 奥田民生
18:50 レキシ
19:20 WH13 SPECIAL BAND<The おそ松くんズ>

所用のため会場到着が清水ミチコさんのステージ途中からだったので、残念ながらそれまでのステージを見れていない。
それを大前提として。

まずは結論から。
<本日のMVP> 奥田民生
<本日の裏MVP> 咲坂さんと桃内さん(小林克也&伊武雅刀)&YMO
<本日の掘り出し物> トクマルシューゴ
<本日の爪痕残しアーティスト> レキシ

このブログにこうして夏の野外フェスを取り上げるのは初めてである。
その昔、Jazz系の夏の野外フェスには参加したことはあるものの、いわゆるRock/Pops系のイベント参加は考える限り初。
オムニバス的に様々なアーティストをチョイ齧り出来るのがよい。

本来の目的は、先日兄弟としての活動を休止したキリンジの初お披露目ライブを見届けるため。
兄弟としての活動を見納めたからには、お披露目もとりあえず見ておかねばならぬ。
それに加えて、主催者である高橋幸宏、坂本龍一、矢野顕子、奥田民生、清水ミチコ、テイトウワetcetc(以上敬称略)をまとめて見られる点が心躍る。
さらに7月に、咲坂守(小林克也)&畠山桃内(伊武雅刀)という2人の参加が発表されたものだからスネークマンショー好きにはたまらない。
つまり、自分の中ではメインは新生キリンジ、裏メインは小林&伊武という気持ちでライブに臨んだ。

とにかく、出演順に特に感想のあるアーティストを列記していく。

清水ミチコ
歌&ピアノ&笑い。これが相応の水準以上に出来る人はそうそういない。
厳しい矢野顕子さんに認められる存在。
前からリスペクトしていたが、初見。歌も含めて普通に上手いし、会場をしっかり沸かす。
いい意味で色物の役目をきっちり果たし、その上で矢野さんと「丘を越えて」を共演。
芸人の立場で矢野さんと渡り合える唯一無二の存在。あらためてリスペクト。

矢野顕子
<セットリスト>
1,丘を越えて(矢野顕子&清水ミチコ)
2,海のものでも、山のものでも
3,セラピー(忌野清志郎)
4,いい日旅立ち
5,ひとつだけ

毎夏、ブルーノート東京で拝聴する矢野さん。今年はこの夏フェスで。
ブルーノートではウィルリー&クリスパーカーとのトリオで目下出演中のところ、この日のみオフ。その合間にこちらへ登場する精力的な矢野さんである。こちらではピアノ弾き語り。
皆が知っている曲の羅列ではなく、キヨシローに捧げる曲もデイドリームビリーバーのような定番ではなく敢えてセラピーで。
その大衆迎合しなさ加減が矢野流を貫いていてよし。
その上で誰もが知ってる「いい日旅立ち」をどっからどう切り取っても矢野さんの曲に仕上げて聴かす。
聴衆感動の絵。そして「ひとつだけ」で〆。ちょうど良い加減。
相も変わらぬ音楽性/クオリティの高さ。

スチャダラパー
もう絶対こういうイベントじゃなきゃ生で聴くことのないアーティスト。
にしても、ラップとしては芸暦長いよねぇ。ポンキッキーズ出てたもんねぇ。
そのポンキッキーズでも流れていた「GET UP AND DANCE」とか、あるいは「今夜はブギーバック」が聴けたのは嬉しかったなぁ。
「今夜はブギーバック」、20年経つのに全然古くない。

TOWA TEI
なんだかよく分からないが凄いアーティストだよなぁ、ってずっと思っている。
だからこの人も生で見れたのは収穫。
僕はDJの技術とかその辺のところは全く専門外なのだけれど、きっちり盛り上げてくもんね。
結果として、スチャダラパーから続くこの流れで立って盛り上がっている人が特に多かった。

柴崎コウ
<セットリスト>
1,かたちあるもの
2,KISSして
3,恋の魔力
4,wish
5,月のしずく
6,最愛

この人もこういうフェスじゃなかったら見てない。
普段意識して聴いていないので「あ、この曲、この人の曲だったんだ」という感じ。
立ってしっかり盛り上がる人が多いのかと思いきや、逆にその前2組が盛り上がってしまったのもあって、この日一番レジャーシートに座ったり寝転んで聞く人が多かったように思う(まぁそういうしっとり系の曲も多いしね)。
とまぁ割を食った感じでもあるのだが、さすがに10年も歌でやってるだけあって、めっちゃ暑い中でもしっかり声は出ていた(けれど、厳しいことを言えば、一発で彼女の声と判別するまでには至らない)。
もちろん、今回出てたアーティストの中では、好みは別として一番S級スペック美人であることは間違いなし。

トクマルシューゴ
今回一番の掘り出し物アーティスト。
申し訳ないが全然知らなかった。
僕は楽器を駆使して、演奏するタイプの方が好みなので、これほどまでに楽器を多様してアンサンブルしてくれると面白い。
ホームページのバイオにあるように『ギターと玩具を主軸に無数の楽器を演奏する音楽家。楽曲の全てを作曲、演奏、録音までひとりで作り上げている。』とあるので、天才肌なんだろう。
マイフェイバリットミュージシャンであるパットメセニー率いるパットメセニーグループの’80年代後半〜’90年代にかけての音楽性にJ-Popを融合させて歌を乗せたようなタイプ。
なんといってもメセニーグループよろしくバンドメンバー2人くらいがアコーディオン、ピアニカからリコーダー、笛などなど“なんでも屋”をやっているのが見ていて飽きない。
さっそくこれから聞き込んでみたい。

salyu×salyu
salyuと言えばBank Bandとの「to U」くらいしか知らなかったのだが、このsalyu×salyuでは全く違う音楽性を見れた。
小山田圭吾ワールドの様にも思う(現に後ろで小山田さんがギターを弾いている)。
やってることはなかなかに高度。
ここまで、多種多様な音楽を連続して聞くと、日本ならではだな、と感じる。
別に他の国と比較して勝ち負けではないのだが、まだまだアジアの近隣の国ではこれほどまでの多面性のある音楽は、そういう資質をもった人間がいたとしても、背景的に生まれ出てこれない気がする。

KIRINJI
<セットリスト>
1,ナイーブな人々
2,フュージティブ
3,仔狼のバラッド
4,ホリディ

さて、今回の最大の目的である新生キリンジ。
兄 堀込高樹さんと田村玄一/楠均/千ヶ崎学/コトリンゴ/弓木英梨乃の6人がメンバー。これはどうも固定らしい。
今回は弓木英梨乃さん抜きで。
果たして、新生の1曲目は何から始まるのか。
他にどんな曲をやるのか。
メインボーカルだった弟が抜けて、誰が歌うのか。
それより何より、客の中にキリンジ知ってて来てる人がどのくらいいるのか。

まず、アクトが始まると、そこそこ多くの人が反応し、立って聞いていた。どうやらキリンジ目的の人も相当数いるようだ。
そして記念すべき一曲目、僕はやはり新生だけに「ニュータウン」とかそういった「さぁこれから先に進むぞ!」的な曲で始まるのかと思っていた。しかし、それはあまりにも常人的な発想であった。
そうだ、兄弟としての解散ライブとて、全く感慨なし/マイペースで押し切った兄貴である。
ここに来て、急にファンに(ましてや一見の客に)媚びたりするわけがない。
演奏した曲は、ざっくり言えば、ナイーブな人々の曲⇒犯罪を犯して逃亡してる女の曲⇒狼と寝た女の曲、、、と、どこが新生なのだという訳の分からなさである。
たった4曲しか演奏出来ないのに新曲2曲、一番最新のアルバムから2曲、と、往年のキリンジファンをも見事に裏切る選曲。
もうこれは兄貴の「やりたいようにやるぜ!」宣言にしか見えない。
とはいえ、2曲目の「フュージティブ」なんてThe堀込高樹の曲って感じで、1曲目は兄貴が歌ったものの、この曲はキーボードのコトリンゴさんがキーボードを弾きながらボーカルで、もの凄くいい塩梅。
どこまでファンが付いてくると思ってんだ!と考えながらも、ちゃっかりこの後の展開をフォローしたい気にさせられてしまった。
ただ、一見の人を引きつけられたかというと、ムリに思う。

奥田民生
<セットリスト>
1,マシマロ
2,イージュー★ライダー
3,風は西から
4,それはなにかとたずねたら
5,コーヒー
6,さすらい

ユニコーン時代も含めて、好きな曲も多い民生さんだが初見。
エレキ/アコギを駆使して1人でパフォーマンス。
百戦錬磨感がハンパない。
ギター一本なのに、1曲目のマシマロ(これがまたカッコいい)から見事に客を惹き付けて、己の歌だけで盛り上げていく。
パフォーマンス&シンプルなのに厚みのある音楽&歌詞の響き具合&力の抜け具合&思い入れの曲を聞けたことも含めて、文句なしで本日の私的MVP。

レキシ
これまた今日の掘り出し物。こちらも不覚にも知らなかった。
そして日も沈んで何となく客のテンションも上がってきた所で、結果的には一番盛り上げ、沸かせ、爪痕を残したバンド。
最初、知らない観客は「え?!ちょっと寒いバンドか?!」みたいな感じだったが、とにかく池田氏のMCが上手すぎ。
客が進むにつれ、意外とEW&Fみたいな(っていうかそのまま)ファンキーなノリでのせられてしまう。
印象に残るステージであった。
逆に言うと、このバンドは音源こそ聞いてないがライブバンドだと感じる。
あの池田氏のMCのおもしろさはライブで味わわないと分からない。

WH13 SPECIAL BAND<The おそ松くんズ>
レキシでアツくなったあと、おもむろに会場モニターには咲坂さん(小林克也)と桃内さん(伊武雅刀)が映る。
かれこれ30年近く、さんざんスネークマンショーで声を聞いてきた2人である。
もうそれだけで感慨深い。
2人とも、年齢的には「おじいさん」の年齢だが、なにしろ声がいい。
僕は年齢を感じさせないためには「声の維持」が大事だと思っている。
この2人はそれを地で行く。衰えなし。

小山田圭吾 / 鈴木茂 / 小坂忠 / 小原礼 / Dr.kyOn / 佐橋佳幸 / 高橋幸宏 /の面々がおそ松くんズの基本メンバーで、咲坂さんと桃内さんがMC担当。
これだけでも凄いのだが、曲ごとにゲストが加わって、演奏が行われるのだ。
ちなみに私的にはDr.Kyon氏に思い入れあり。こちらはボガンボスのキーボーディストだった人である。ついぞボガンボスを見ることなくどんと氏が亡くなってしまったので、初見。

矢野顕子&奥田民生が加わっての「ラーメンたべたい」。
何度となく聞いてきたこの曲だが、ブルーノートで聞くJazzタッチの変化あるものではなく、ある意味正調版が聞けた。
逆に「素晴らしい日々」も聞きたかったというのは欲が出過ぎか。

クレジットには細野晴臣さんの名前がなかったので、今年はこないのかと思いきや、最終的には来た!
そして、YMO揃っての演奏。初見。
曲は「Tibetan Dance」と「Fire Cracker」だ。
いや、もう、それはもう、これまたスネークマンショーに絡んでYMOをこれまたさんざん聞いてきた我が身にとっては、YMOが演奏してるということが問答無用に嬉しいわけである。
Fire Cracker後にバンッ!とFire Crackerが上がって本編終了。

そして、アンコール。
ステージ上に咲坂さんと桃内さん登場。
ふいに桃内さんが「おいカメ!シンナーに気をつけて壁ぬんな!」と。
往年の『シンナーに気をつけろ』の再現だ。
さらに「咲坂さん、あそこに落ちてるの犬の糞じゃないですか?」とこちらも『今夜はごちそうさま』の再現。
そして、そのままYMO&おそ松くんズをバックバンド、ゲストミュージシャンをコーラスにして「ごきげんいかが、ワンツースリー」を。
何と言ったらよいか、とにかく言葉にならない。感涙ものである。
まさか生で見られると思っていなかった演目とそれに携わった人達を同時に見れた感動、である。

ただし、一つ加えておくべきは、スネークマンショーを分かっている人なら大満足のステージだが、知らない/分からない人には、ただのグダグダ劇にしか映らないという二極化だったということ。
その意味で僕的にはこの演目は裏MVPであり、真のMVPは奥田民生さんということである。

一言で言えば、このフェス。「古くならない音楽を創る人達のフェス」であると感じた。
そのまま演奏しても昔の楽曲は光り輝いてるし、そもそもちょっとした現代風の味付けを施してくるから全然古くない。
これは凄いこと。
そして、変に気張ったりしない、肩の力の抜けた、大人のフェスであることも付記しておこう。

もうこの人達が一同に会することは二度とない気がする。
あったとしても僕がそこに立ち会えるかどうか分からない。
その意味で、他のどのフェスにもない、この日、東京のこの場所だから叶った奇跡に感謝。

みなさまもご一緒に
ジャパニーズジェントルマン スタンダッププリーズ

ヒアウィーゴー エブリボディ カモンロックンロール
ユーアンドミー ミーアンドユー レッツロックンロール

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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