Live鑑賞 〜 PAT METHENY “SIDE EYE” with JAMES FRANCIES & NATE SMITH Live at BlueNote Tokyo 2019

2019年1月18日。2nd Show。

PAT METHENY “SIDE EYE” with JAMES FRANCIES & NATE SMITH Live at BlueNote Tokyo 2019


PAT METHENY “SIDE EYE” with JAMES FRANCIES & NATE SMITH Live at BlueNote Tokyo 2019

パット・メセニー “SIDE EYE”
with ジェイムズ・フランシーズ & ネイト・スミス


Pat Metheny(g)
パット・メセニー(ギター)
James Francies(p, key, synth b)
ジェイムズ・フランシーズ(ピアノ、キーボード、シンセベース)
Nate Smith(ds)
ネイト・スミス(ドラムス)


メセニーを見るのは2年8ヶ月ぶり。
来れば必ず見に行っていることを考えるとメセニーにしては結構間隔が開いている。
約3年新たなプロジェクトやアルバムを出さずにこなかったということで、これも珍しい。
で、またこの前回のライブというのが、メセニーライブとしては、???という内容だったので、さぁ果たして「ワールドプレミア」とまで銘打ったこのトリオがどんな地平を切り拓いてくれるのか、否が応でも期待が高まる。

前回のライブレポ
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Quirtet Live at BlueNote Tokyo


年が明けた2019年1月のブルーノート東京はメセニー三昧。
20日までの間にメセニーの3つのプロジェクトが見られるという豪華版。
1つはブルーノート東京Jazzオーケストラとの共演、1つは前回のカルテットからアントニオ・サンチェス抜きのトリオ、そしてこのSideEyeプロジェクトという、全世界のメセニーフォロワーが喜ぶラインナップ。
そもそもメセニーという人はコンサートホールアーティストであり、ジャズクラブのような小さなハコでライブをやるのは僕が知る限りでは日本、とりわけブルーノート東京くらい。
今回の3つのプロジェクトもブルーノート東京独占で、行きもしないのにけっこうチェックしている本家ブルーノートニューヨークのスケジュールをチェックしていてもメセニーはまずライブをやらないことを考えると「世界で最も好きな場所の1つがブルーノート東京」というのもあながちリップサービスではない気がする。


そんなわけで高額なミュージックチャージにも関わらず、連日超満員。
至近距離でメセニーのプレイが見られることを考えれば、日本中はもとより世界からわざわざ見に来る人も何人かはいるかもしれぬ。


さて、以下に記すことは、なんだかんだ言ってもメセニーのライブであり
「一定水準以上の音楽的なクオリティは保っているライブだった」
ということを踏まえた上で読んで頂ければ。


予定時刻をほんの少し過ぎた21時過ぎに3人登場。
いったいこのベースレストリオでどんな演奏を巻き起こすのか、期待が高まっている場内の空気が感じ取れる。
「All the things you are」のようないわゆる4ビートのジャズ曲を2曲。
そうくるか、でもあり、そうは言っても今までとはミュージシャンが違うためアプローチが当然違う。


この時点で思うことは、やっている曲からしても現代版のメセニー〜デイブ・ホランド〜ロイ・ヘインズトリオを目指したのか?ということ。


ところが3曲めからはメセニー曲の開始。
トリオ編成ではよく演奏する「So May It Secretly Begin」。
曲がいいからそれだけで長年のオーディエンスは感動しているようにもみえる。
もともとは王道パット・メセニーグループの曲なので数人以上で演奏する曲を3人で演るわけだが、とても3人で演っているようには思えない音圧。
それでも僕も含めて観客の頭の中にはペドロ・アズナールの唄声が響き渡っていただろう。


今回のライブで一番おっ!!と思わせたのは4曲めの「Better Days Ahead」。
この曲に関しては’90年代のメセニーグループライブではよく演奏されていたが、それ以降でメセニーが演奏しているのを見るのを初めて見た。ましてやトリオバージョンは初。
この曲、個人的には結婚式ライブで演奏したりとかなり思い入れがあり、もともとはボサノバ。
グループのライブでも超高速ボサノバという感じでぶっ飛ばしていたのだが、今回は虚を突かれて重いビート(分かりやすく言えばロバート・グラスパー風味とでも言おうか)曲に仕上げてきた。


この時点でなんとなく掴めてきたのは、今回のジェイムズ・フランシーズもネイト・スミスも黒人であり、ロイ・ヘインズのようなレジェンドを除けば、メセニーが黒いビートを持つ人たちと本格的な自己名義のバンドで絡むのは初めて。
で、そこに新境地を見出そうとしているのではないかということ。
アントニオ・サンチェスは白人ではなかったがメキシコ人で、中南米の血であり、アフリカンな要素とは違う。


だから4ビート曲に始まって、メセニー曲を彼らとともに新たなステージに昇華させようとしているのかもしれない。


もちろん血の問題とは関係なしに2人のミュージシャンの才能がとんでもないということは付け加えておきたい。
ジェイムズ・フランシーズは22歳という(!)。
メセニーが、メセニーグループが、ブイブイ言わしていた時期に生まれてきたわけで、音源や映像でしかあの頃のサウンドを知らない世代なわけだ。
一人でベースも引き受けて、ピアノ/キーボード/オルガンに到るまで弾き倒す。
見た目では22歳なんて信じられんのだが、全く臆せずに弾きまくるので気持ちがいい。
確かにメセニーが言うように「見たことのない才能」の新たな1ページ。
世界には領域にとらわれない、教科書どおりの演奏をしない才能がまだまだいるものだ。


ネイト・スミスとて40代なのでまだまだ若い部類。
これがまたやはり黒いグルーヴ、粘りっこいグルーヴを持ち、気持ちがいい。


こうしたあらゆる音楽を聴いてきた世代と絡むことによって新たな地平を見出そうとしているメセニーなのかもしれぬ。


ただし、、だ。
「Better Days Ahead」以外は際立って目新しいアプローチはなく、最後はトリオでは定番でもある「Question & Answer」で終了。
アンコールに応えようという姿勢もなく70分きっちりで幕。


この辺り、ずっと見てきたファンとしては拍子抜けである。
だって、メセニーといえば他のメンバーを休ませても自分だけは弾き倒して弾き倒して「ぼくギターが好きで堪んないんだもん状態」で弾きまくって、4時間近くライブをするのはザラ。
すみだトリフォニーホールのライブ時なんか5回もアンコールに応え、こちらから「もうOKです!満足しました!大丈夫っす!寝てください」と言わせるまで演奏するという’90年代全日本プロレスの四天王プロレスを彷彿とさせるような弾きっぷりだった男である。

2014年10月10日すみだトリフォニーホールでのUnity Group ライブ
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Unity Group Live at すみだトリフォニーホール

それが70分?!
アンコールなし?!
一体どうしちゃったの??と思わざるを得ない。


しかも、嫌らしいことを言ってしまえば当時よりも値段は上がっており、ぶっちゃけ¥13,500。
他のアーティストならば2回見れそうなところだ。
このあたりは前回のライブでも書いたところなのだが、それでも前回は2時間強演奏してくれているし、何と言ってもメセニー&アントニオ・サンチェスのドラミングを見るだけで身銭を切る価値があった。
ケチな意味で言っているわけではなく、その値を払う価値があるライブだったと思えたならば、1万でも2万でも払うしそれは安い。
(マイケルジャクソンが生き返ってライブを1回だけやってくれるのなら、いったいチケット代はいくらになるだろう?ビートルズは?マイルスは?などと想像するのはおもしろい)


メセニーはちょっぴり太っていた。
前はそんなに大きくなかったよな?
足は普通のサイズなのだが、上半身が以前よりデカい。ふくよか。
じゃあだからと言って、体力ダウンしていたり、弾けなくなっているように見えたか?というと否であり、ソロは相変わらずそこいらのアーティストとは違う感性を見せてくれて瑞々しいし、指も全然動いている。


学生時代の先輩が冗談ぽく仰っていたが「ストレス太り」なのかもしれぬ。
ここまでのメセニーはやりたい音楽がわんさか出てきて、全て実現させてきた。
「メセニーの音楽」と言ってしまえばそれまでだし、ジャズオヤジたちは認めないかもしれないが、マイルス以降でもしかしたら一番「Jazzをやっている男」という意見には賛同する。
それをオーディエンスは毎回びっくりさせられながら楽しんできた。


それが数年前にUnity Bandで昇りつめて以降、無くなってしまったのかもしれない。
無くなってというのは嘘で「湧き出てこなくなった」のか。
つまりそういう「ストレス」。


ぼくには、暗中模索状態、試行錯誤状態、に思える。
今週のトリオと、前回から引き続いているリンダメイハンオウ&グウィリムシムコックなども交えて何か新しいものを見せてくれると嬉しいのだが。。。
そこに到るまでの段階に我々は立ち会っているのか、まだ彼らは次なるメセニーのやりたい事を実現させるミュージシャンにまで成長仕切れていないのか。
そういった意味でストイックなメセニーの事だから満足していないライブを客に見せるのをはばかっているのか。


今回のライブは前回のライブでのモヤモヤ感を払拭させるどころか、さらに謎が深まるライブと相成ってしまった。


それでもやはりメセニーには期待してしまう。
同世代のアーティストたちもまだまだ元気で、マクラフリンなぞ70を越してまだまだ攻めた音楽を見せているし、これで終わるメセニーではないはずだ。


こういう事も含めての、ライブ。
ギター小僧に終わらず、クリエイトし続け、ジャズをし続けてきた人だからこそ語りたくなる。
語ることがもう幸せ。
お金を払うのだから当たりのライブばかり見たいというのは野暮。
どんなエンタテイメントにもいいものもある、悪いものもある。
ハズレを見ないと当たりは分からない。
(オーディエンスの笑顔を見ていると必ずしもハズレのライブでもないし、最初に書いたようにクオリティは高いのけどね)


次なるメセニーのステージと、若干痩せてくれる事を期待しつつ、ぼくはぼくにとっても好きな場所の一つであるブルーノート東京を出たのであった。

ネイト・スミスはラディックのドラムにジルジャン

来場者全員に配られたカップ

’90年代以降メセニーを見続けている中で、過去、このブログに書き残しているメセニーライブ

ラリーグレナディアとのデュオ
Live鑑賞 〜 An Evening with Pat Metheny with Larry Grenadier Live at BlueNote Tokyo 2012
オーケストリオンプロジェクト
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Ochestrion Live at すみだトリフォニーホール 2010
2009→2010の年またぎで行ったメセニーグループライブ
Live鑑賞 〜 Pat Metheny Group Live at BlueNote Tokyo 2009
ブラッドメルドーとのデュオ&カルテット
Live鑑賞 〜 Pat Metheny & Brad Mehldau Live at NHKホール 2007


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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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