幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]
2015年4月17日 金曜。
Antonio Sanchez & Migration Live at Cotton Club
Antonio Sanchez & Migration
アントニオ・サンチェス&マイグレーション
BAntonio Sanchez(ds)
アントニオ・サンチェス(ドラムス)
Ben Wendel(sax)
ベン・ウェンデル(サックス)
John Escreet(p)
ジョン・エスクリート(ピアノ)
Matt Brewer(b)
マット・ブリューワー(ベース)
<Set List>
1.CONSTELLATIONS
2.NAR-THIS
3.NEW LIFE
4.NIGHTTIME STORY
5.THE REAL MCDADDY
EC.I MEAN YOU
マイフェイバリットミュージシャンであるパットメセニー。
とりわけ、パットメセニーグループの音楽は大好きである。
そのパットメセニーグループにアントニオサンチェスが加入したのが2002年のアルバム「スピーキング・オブ・ナウ」からだから、もう13年になるが、最初に彼が参加した時の正直な感想を言えば、
「え〜〜ポールワーティコじゃないの??」であった。
アルバムから聞こえる彼のプレイの確かさは認めた上で、多くのメセニーグループファンがそうだっただろう。
が、この13年、確固たる地位を彼は自らの手で築いた。
もう、誰もメセニーグループファンでアントニオサンチェス批判をする人はいまい。
否、もはやアントニオサンチェスは、いなくてはならない存在にまでなった。
今までのメセニーグループに去来したダンゴットリーブもポールワーティコも、もちろん優秀すぎるドラマーである。
でも、いまいちメセニーグループ以外での活躍が聞かれない。
ぼくとて、ダンゴットリーブは未だにライブで見た事が無いし、ポールワーティコも2007年のラリーコリエルトリオで一度見た限り。
ところがアントニオサンチェスの活躍たるや相当なもので、この13年、メセニーの相棒を務めるかたわら、チックコリア、ゲイリーバートン、デビッドサンチェス、ケニーワーナー、アビシェイコーエン等々、錚々たるメンツから引っ張りだこである。
それだけバーサタイルなドラマーだということだろう。あとは本人の人柄か。
そんな彼が、自身のバンドを率いての本邦初ライブである。
大きく言えば注目点は2点。
1つは、いつもバックで演奏している人がリーダーになると、全然違う音楽をやることはよくある。
あ〜実はこういう音楽をこの人はやりたいのね、と。
それが一体どんなものなのか。
こと、ジャズ系アーティストに関しては個々のアルバムでは全貌は掴めない。
あくまでもライブを見ないと、である。
そしてもう1つはもちろん、彼の世界屈指のドラミングテクニックを堪能すること、である。
まず、彼の音楽であったが、もうこれは完全に現在進行形のジャズであった。
編曲も含めて、実にいい塩梅に聞かせてくれて、古くさくなく尖った最先端のジャズだ。
かと言って「音楽がどこにいくか分からない危うさ」みたいなものは、良くも悪くも皆無。
必ず着地させてくれる。
オーソドックスな4ビートジャズではなく、そこはドラマー、あらゆるリズムが変幻自在に出てくる。
印象に残った曲は多いが、なかでもビルエバンスの名演で知られる「Nardis(ナーディス)」。
この曲、あまりにもビルエバンスの演奏が強烈な上に、ともすると甘〜〜い曲になってしまうので、編曲も難しい。
この曲を実に上手く料理していた。
↓このナーディスは、サンチェスの「スリープラススリー」というアルバムに収録されている。
先日のMEHLIANAで強烈なライブを披露してくれたブラッドメルドーと。
そんなわけなので、ドラマーがリーダーだったりすると、作編曲から変な感じになってしまい(ジャックディジョネットがいい例)、音楽的には万人受けしないことが多いのだけれど、さすがにそこは映画「バードマン」のサントラでアカデミー賞まで獲ってしまったアントニオサンチェス、音楽的完成度がとても高いライブだった。
さて、その上でドラミングである。
彼が技術的に世界最高峰の1人なのは、もう十分に知っている上で見に行っているわけだから、こちらとしてもそれ相当の期待値がある。
で、結論から言えば、その期待値を大幅に上回ってみせてくれた。
というか、やっぱりこの人とんでもないわ〜〜、と再認識させてくれた。
中南米系のドラマー恐るべし、は前からぼくが提唱していることだけれど、オラシオヘルナンデスが完全キューバのラテン系+ロックな要素を持ち合わせているのに対し、サンチェスは高度な技術の上に音楽的表現力の高さと繊細さを兼ね備えている。
左足のクラーベは朝飯前で、サンチェスは左足で、ハイハット、ツインペダル、クラーベの3つのペダルを駆使した上で両手と右足は変幻自在の動きをして涼しい顔なのだから恐れ入る。
↓冒頭から左足のクラーベが炸裂。7分半過ぎからの異常なリズム感も見所。9分半過ぎからはクラーベとツインペダルのダブルで。異常以上だ。
ものスゴく高速でストロークするんだけど、それを感じさせないのがこの人のすごいところ。
速いのに速く見せていない。
それは、それを上回る表現力があるから。
今回、あらためて彼のドラムをじっくり見ていると、とにかくフレーズが止めどなく溢れ出てきているのが分かる。
アイディアが豊富。
オーソドックスなフィルインを叩かない。
だから飽きない。いつまでも見ていられる。
これは、他のアーティストも共演したくなるわ、と思う。
さらに言うと、この人、リズムを崩している。
その昔、ジャックディジョネットがマイルスのバンドに加入したときに「リズムを壊すように叩け」と言われたのは有名なエピソードだけれど、この人のドラミングは、その進化版だな、と。
表現力の高さと、リズムを壊しているようでタイムキープをきっちりやり切る技術力、あ〜やっぱりこの人は間違いなく世界最高峰のドラマーの1人であることには疑う余地がない。
今年は、すでにMVP候補のライブが目白押しだが、う〜ん、ドラミングMVPはやっぱりサンチェスかなぁ。
ドラマーがリーダーのものとしては、過去にないほど大満足のライブだった。
ヤマハドラム。シンバルはジルジャン。
トラッシュシンバルの上にオリエンタルシンバルを逆向きに付けて、しかもシズルを入れているという。。。
これでかなりパーカッシブな音になる。
ナーディスの解釈が面白いアルバム
スリー・タイムス・スリー
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