幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]
2013年9月8日。
Count Basie Orchestra featuring Butch Miles Live at BlueNote Tokyo
THE LEGENDARY COUNT BASIE ORCHESTRA
featuring BUTCH MILES
ザ・レジェンダリー・カウント・ベイシー・オーケストラ
featuring ブッチ・マイルス
Doug Miller(tsax,director)
ダグ・ミラー(テナー・サックス、ディレクター)
Butch Miles(ds)
ブッチ・マイルス(ドラムス)
Scotty Barnhart(tp)
スコッティ・バーンハート(トランペット)
Mike Williams(tp)
マイク・ウィリアムス(トランペット)
Bruce Harris(tp)
ブルース・ハリス(トランペット)
Shawn Edmonds(tp)
ショーン・エドモンズ(トランペット)
Clarence Banks(tb)
クラレンス・バンクス(トロンボーン)
Dave Keim(tb)
デイヴ・ケイム(トロンボーン)
Alvin Walker(tb)
アルヴィン・ウォーカー(トロンボーン)
Mark Williams(btb)
マーク・ウィリアムス(バス・トロンボーン)
Marshall McDonald(as)
マーシャル・マクドナルド(アルト・サックス)
Cleave Guyton(as)
クリーヴ・ガイトン(アルト・サックス)
Douglas Lawrence(ts)
ダグラス・ローレンス(テナー・サックス)
Frank Basile(bs)
フランク・ベイシル(バリトン・サックス)
Bobby Floyd(p)
ボビー・フロイド(ピアノ)
Will Matthews(g)
ウィル・マシューズ(ギター)
Marcus McLaurine(b)
マーカス・マクローリン(ベース)
カウントベイシーオーケストラ。
名前くらいなら普段ジャズを聴かない人でも目にしたことがあるくらいビッグネーム。
近年では「人志松本のすべらない話」のテーマ、と言った方がいいかもしれない。
(「Dinner with friends」という曲である)
他にもあの番組内で挿入される曲は皆カウントベイシーだ。
何と言うべきか、普段Jazzを聴かない人が「Jazzのビッグバンド」と聞いて思い浮かべる音楽の最右翼の形かもしれない。
僕はビッグバンドを見ないわけではないのだが、この11月にもやってくるミシェルカミロビッグバンドだったり、マッコイタイナービッグバンドだったり、小曽根さんのNo Name Horcesだったり、ロンカータービッグバンドだったり、ヴァンガードジャズオーケストラだったり、GRPオールスタービッグバンドだったり。。。どちらかというと新世代(?)のビッグバンドを見ることが多く、いわゆるオーソドックスなビッグバンドを見ることが殆ど無くきた。
カウントベイシーオーケストラも例に漏れず、実は今回が初見である。
同日、同時間帯に東京国際フォーラムでは東京Jazzが開かれ、“音楽の楽しさを体現する男”ボビーマクファーリンのバンドとチックコリアの新バンド「ヴィジル」を同時に見れることもあって、そちらとこちら、どちらを聴くか大いに迷ったのであるが、カウントベイシーにしてみた。
普段聴く音楽の傾向からすれば、絶対にフォーラムへ行っていただろう。
では何故に?
答えは、ブッチマイルス!の一言に尽きる。
自分自身の「トップドラマーを見ておけ!」の血がブルーノートへ行かせた。
ボビーやチックはまた次にでも見られる機会があるが、ブッチマイルスはここを逃すと二度と見られない気がしたのである。
僕がブッチマイルスのドラミングの凄さを知ったのはいつだったかもう覚えていないのだが、彼の叩いている映像を見て感心した。
それはいわゆる現代ドラミングではなくて、どちらかというとビッグバンドドラム、古典的なドラミングなのであるが、’80年代以降のウェックルやデニチェンによってもたらされたモダンドラミング、テクニカルなドラムとは一線を画す「古典の凄さ」があった。
ブッチ本人もバディリッチから影響を受けたと言っているように、バディリッチ亡き今、まさにダイナミクスありまくりの正統なリッチ風ビッグバンドドラミングを魅せてくれるのはブッチしかいないのである。
カウントベイシーオーケストラがちょくちょくブルーノートに来ていたのは知っていて、それにブッチマイルスがクレジットされていたのも知っていたが、その時は僕はブッチの事を知らず、特に観に行こうとしていなかった。
変なもので、僕がブッチを知ってからというもの、なぜかブッチはカウントベイシー楽団に帯同しなくなった。
そして長きを経て、今回久々にカウントベイシービッグバンドに帯同、長年の時を経て、ついに見れる瞬間がやってきたワケである。
ここまでブッチマイルスの話を書いてきたので、先にブッチマイルスの感想を書いておく。
忌憚なく申せば、来年70歳になるブッチのプレイは、さすがに全盛期の頃に比べて衰えを感じさせた。
いや、もうそれは「全盛期の彼と比べて」の話であって、今でも十分にそこら凡百のドラマーより全然パワフルだし音の粒も立っているのだけど。
彼の様なパワフルなプレイをする人ほど、衰えた時に、聴いている側には何とも言えない寂しさがあるのだ。
(近年のマッコイタイナーがそうであるように)
本人は溌剌、ニコニコと和やかに楽しそうに叩くのだが、やはりしんどさを抱えているのだろうか、フューチャリングと銘打った公演にも関わらず、ドラムソロは最後の曲まで無く、最後の曲ですらほんの少しだけ。
1週前に見たデイヴウェックルの20分の1以下の量である。
いや〜〜さすがに衰えていたとしても、もう少しドラムソロを見たかった、というのが正直なところ。
昔の映像では延々20分くらいクラシカルなドラムソロを叩いてくれていたから残念。
にしても、スーツを来たまま正装で延々叩かなくてはいけないので暑いだろうし、大変だわね。
(最近ではいわゆるドジャズを叩くドラマーも、なかなかスーツを来たまま叩き続ける人はいない)
ドラム論をもう少しだけ。
そういう意味で故バディリッチの凄さをあらためて再認識した次第。
彼は死ぬ直前まで変わらずにパワフルなプレイを続けていたし、音の粒立ちも衰えることがなかった。
どれだけトレーニングしてたんだって思う。
ただ、バディの場合は、猛烈にスイングし過ぎて個性がキツ過ぎるため、自己のビッグバンドしか他の楽器との折り合いがつかなかったということもある。
ところがまたバディリッチビッグバンドの音楽は今でもカッコいいのよねぇ。
(アメトークとかテレ朝系のバラエティでよく使われている)
僕はどっちかと言うと、バディの音楽の方をよく聴く。高速道路で走る時にもってこいである。
生前彼を観れなかったのは残念。
歳をとるにつれて筋肉が衰えていくのは仕方がないこと、パワフルに叩く人はいかにそれを制御していくかが課題である。
そういう意味では今でも現役のロイヘインズ師匠の省エネ改良ドラミングは“あるべき姿”だと言える。
さて、客層。
僕はロンカータービッグバンドの時に、年齢層が高めだったこともあり、今回もそうなると思っていたのだが、老若男女入り乱れである。
どうやら学生が多い。
なるほど、学生でビッグバンドをやっている人達が聴きに来ているわけね。そんなグループがいっぱいいた。
やっぱり彼らはこういうオーソドックスなビッグバンドを見に来て、僕が見るようなビッグバンドは亜流なのかもしれない。
(ミシェルカミロビッグバンドなんか、どう考えたって亜流だわな)
そんなわけなので、東京Jazzをやっているにも関わらず、客席は満杯。
いやもう、音のまとまりは完璧ですよ。
じじぃ達ばかりなんだけれども、百戦錬磨。ソロも聴かす聴かす。
曲がアナウンスされるたびに大歓声、というくらい有名曲のオンパレード。
1曲も長くて5分といったところだろうか。コンパクトである。
恐らく。。。それで大歓声なんだから、お客さんも大満足なんだろう。
ただ、普段の僕が聴いているJazzとはやっぱり違うな、と感じた。
なんというか、Jazzなのにカッチリし過ぎているのである。
このオーケストラとてJazzなんだからソロがある、一期一会、その場限りの一発だ。でもそこには「音楽がどこに行くか分からない危うさ」みたいなモノはないのである。
ノってきたら延々20分くらいかけて演奏し続けるというような事もない。その場で音楽が創造されて発展していくという事もない。
僕はどちらかというと後者のようなJazzが好きなんだろうな、って思う。
一糸乱れぬ演奏だからこそ、一糸乱れたらヤバいんじゃないか、っていう感じであった。
こういうのは好みの問題であって、良い悪いではない。
そんなこと言っても、前記したような他のビッグバンドは聴くのにね。
っていうことはやっぱりアレンジとかリズムの趣向の違いなのかもしれないな。
と、こんな事を書きながらも演奏は素晴らしく、各人がソロを取るときにはメンバー同士が声かけて煽ったりして全体にゴキゲンなムードが常に漂っていて、それがまた何とも良い塩梅。
そして何はともあれラディックのドラムを駆るブッチマイルスを生で観られたことが嬉しかった一夜でした。
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