合掌!ゲイリー・ピーコック

この数日、Jazz好きのSNSでは本当のニュースなのか、フェイクなのかで揺れていた一件。
いまだに日本のメディアのニュースには出て来ないけれど、ほぼ間違いない。
残念な訃報。

ジャズ・ベーシスト、ゲイリー・ピーコック死去

最初は、敬愛するドラマー ジャックディジョネットがSNS上でピーコックの死を伝えていて、でもその後全然メディアから情報も出て来ず、、とはいえ、いくらなんでも盟友ディジョネットが嘘を言うこともなかろう、、と揺れていた。
日本でも、Twitter界隈では皆「どっちなんだ??」の嵐。

が、ピーコックが多くの作品を残したECMレーベルからも公式に発表があり、間違いなかろうと。

で、正直に言えば、ぼくはピーコックのことはキースジャレットスタンダーズトリオでの音源しか知らない。
ただ、逆に言えば、スタンダーズは愛聴曲も多いので、ヘタなベーシストよりはたくさん聴いている。

キースのスタンダーズは、何も考えずに聴けば、まぁ誰もが楽しめるのだけれども、実際にはかなりのJazz玄人向けであり、特にあらゆる曲が時として(ホンマにキースの気まぐれに思える)エクステンションとして、ぶっ飛んだ方向に進化、昇華し、収束する様は、めちゃめちゃスリリングで、芸術的で、ザJazzなのであるけれども、分からない人には全然分からないと思われる。

ぼくは、ピーコックのベーシストとしての凄さを語るほどにベースの事は全然分かっていないのだけれど、あの自由すぎて繊細すぎてジャズアーティスト以前に芸術家であるキースジャレットと、変幻自在のディジョネットのドラムの間で、ベースとして音楽を支え続けたこと自体がピーコックの凄さに思う。

弾いている姿が、ベース職人。
前へ出ていく感じでもなく、淡々と弾き続ける。

でも、死を機にいろいろ調べてみると、もともとはドンチェリーやアルバートアイラーなんかのフリージャズの畑から出てきてるし、かと思えばハービーハンコックやトニーウイリアムス、ミシェルペトルチアーニや我がロイヘインズ師匠とも演ってるし、挙げ句演奏から遠ざかって京都に住み、その時に我が日本の富樫雅彦や菊地雅章などの日本人ジャズメンなんかともアルバムを作ってる。
なんか、掴み所のないベーシストだったんだなぁと。
まだまだ聴いてないアルバムもあるので、聴いてみたい。

なにが残念って、ジャズ史上に燦然と輝く唯一無二のピアノトリオ、キースジャレットスタンダーズに紡がれる新しい音楽がもう二度と世に出ることがなくなったこと。

ただ、このキースのスタンダーズは、3人が亡くなっても、ぼくが亡くなっても、100年経っても、人類が存在して音楽がある限り、間違いなく遺されていく作品群なので、ピーコックのベースもそこで生き続けていく。

このブログの記録には残っていないけれど、唯一回だけ、渋谷オーチャードホールにてキースジャレットスタンダーズのライブを見ておくことができて良かった。
(ただし、この日のキースは不調で、エクステンションも全くなかったのが残念)

日本でも数々の名演を遺してきたけれど、1993年雨のよみうりランドオープンシアターイーストにおける、Solarからのエクステンションは、ぼくは高校3年で映像を見、スタンダーズの凄さを初めて知ることになったライブになった。
今考えるとあれだけ神経質なキースが、よくぞ真夏の野外、そして雨が降りまくってスタインウェイが濡れる状況でライブを決行したなと。
伝説のライブである。

以下、その映像。
26分もあるので見なくていいです。
ただ、凄いです。
10分はSolar、そこから5分間その先へと繋がるエクステンションのメロディを探すキース(ベース進行はSolarのまま)、15分頃にもう一度テーマメロディが演奏され、そこから10分強は若干東洋チックになり、リズムまでも変化していく圧巻のエクステンション。3人が互いの音を聴き合い、延々と音を探していく。。。
これが、その日、その場だけで演奏されるジャズの醍醐味。

この日のライブDVD。ライブアンダーザスカイといい、よみうりランドオープンシアターイーストはぼくにとっては伝説の会場だ。

ライヴ・アット・イースト1993 [DVD]

スタンダーズ作品を列記しだすと枚挙に暇がないのだが、以下のアルバム「Inside out」における「Riot」もエクステンションだけを収録したものに思える。
ディジョネットのリズムが怪しく凶悪な香りがプンプンし、曲がどこにいくのか分からないスリリングさがここにある。

Inside Out

あまりにも有名なスタンダーズのアルバム「Still Live」だが、この中の「あなたと夜と音楽と」も美し過ぎるエクステンションに昇華し、そのまま次の「いつか王子様が」へ。泣ける。

枯葉/キース・ジャレット・スタンダーズ・スティル・ライヴ

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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