幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]
2015年10月2日 金曜。
Stanley Clarke Band Live at BlueNote Tokyo
Stanley Clarke Band
スタンリー・クラーク バンド
Stanley Clarke(b)
スタンリー・クラーク(ベース)
Natasha Agrama(vo)
ナターシャ・アグラマ(ヴォーカル)
Beka Gochiashvili(p)
ベカ・ゴチアシュヴィリ(ピアノ)
Cameron Graves(key)
キャメロン・グレイヴス(キーボード)
Michael Mitchell(ds)
マイケル・ミッチェル(ドラムス)
またしてもエゲツないライブを見てしまった、、というのが率直な感想である。
最近のスタンリークラーク(以下スタクラ)は自身のバンドでの新人発掘ぶりが凄まじい。
ある程度名前が売れていたものの、上原ひろみさんを引き連れて世界を回ったのもスタクラだし、このあとカマシ・ワシントンと共に来日するロナルド・ブルーナーJrもそう。
そんなスタクラ、今回はメンバーが思いっきり若い。
先物買いもいいところ。
だが、このピアノとドラムはタダモノではない。
なんとピアノのジョージア(グルジア)出身のベカ・ゴチアシュヴィリは1996年3月生まれだから19歳。
(てか「一応」ブルーノート東京の規則的には入店してはいけない年齢である)
ドラムのマイケル・ミッチェルは来月21歳という若さである。
つまり、日本ならフツーに大学のサークルで演奏していておかしくない2人なのである。
ところがこの2人、どこで見つけてきたんだ??というほどに天才的な才能。
本日のキーポイントは明らかにこの2人であった。
ライブ前からこの2人はYoutubeなどでかなり見て行ったのだが、ゴチアシュヴィリの演奏能力は恐れ入った。
個人的にはキーボードよりもピアノの方が好きである。
ピアノの弾きっぷりをもっと見たかった。
止めどなくフレーズが溢れ出てくる上にあらゆるリズムに対応する。スタクラやマイケルとの息もぴったり。
さて、そしてマイケル・ミッチェルである。
今年は今年で、御大ロイ・ヘインズから先日のデイヴ・ウェックル、アントニオ・サンチェス、そして若手ではマーク・ジュリアナ、ルイス・ケイトーといったスーパードラマーたちを見ていて、いやそれはもうマーク・ジュリアナやルイスを見ても「ドラミングは新たな時代に突入した」と感じたものだが、その言葉を今日まで温存しておけば良かったと思うほど。
それほどに、マイケルのドラミングは凄まじいの一言。
なにせ現在20歳。
とうにデニチェンやウェックルなどのドラミングは研究され尽くした上に出てきたスーパードラマーである。
マークやルイスなどは、モダンドラミングをより繊細でテクニカルで音楽的に昇華しているのに対し、それらと真逆をいくのがマイケル。
もう荒々しいったらありゃしない。
ここ最近、これほど若さにまかせて野性味たっぷりに叩き倒すドラマーを見たことがない。
最近のドラマーの傾向(?)としてタムを少なめにするというセットとも逆をいく。
タムが2つの王道セットに、フロアタムは3つだ。
大振りでしなやかで、超超光速ストローク。
これまた最近流行り(?)の1つ打ちの連打も多用する(超高速で)。
あれは黒人の筋肉のバネでなければムリなんじゃないかと思う。
マイケルのセット。
メイペックスのドラム/スネアにマイネルのシンバルという若干マイナーどころのセット。
VATERのスティック。
崩したシンバルを何枚か巻いてトラッシュサウンドを作るシンバルも
もう1人のキーボーディスト、キャメロン・グレイブスもカマシ・ワシントンの新作に参加したりしていて凄腕なのだろうけれど、今回は脇役に徹している感じで、基本的にはスタクラとゴチアシュヴィリ、マイケルのトリオがグイグイと音楽を引っ張っていた。
なにしろ、この若手2人が生まれた時からブルーノート東京に通っているぼくにとっては、ついにそういう世代がステージに立つようになったかと感慨深い。
そういう感覚を味わったのは今日が初めてである。
さて、逆に彼らが生まれる倍以上前から第一線にいるスタクラ。
前回見たのは2010年秋で、その時は上原ひろみさんを向こうに回して、さすがの弾きっぷりを見せてくれたけれど、今日も今日なり。
ブルーノートのホームページにある初日のレポートとは全く違うメニューで、10/2のセカンドショーではエレキもアコースティックも両方のベースを弾き倒し、あらゆる奏法を見せてくれた。
ベースという楽器の可能性を広げた、というのは伊達ではない。
とはいえ、スタクラの演奏は完成されている。されすぎていると言っても過言ではない。
だからこその若手3人なのだろう。
荒削りでグイグイと前へ出てくる若さによって音楽がインスパイアされるのを計算し、楽しんでいるようだ。
単なる奏者ではなく、プロデューサーとしての面目躍如。
魅せ方をスタクラは知っている。
「Brazillian Love Affair」は聴けなかったが、「School Days」やチック・コリアの「No Mystery」が聴けたのが嬉しい。
各人の超絶技巧が味わえて、今まで聴いた中で一番エグい「No Mystery」であった。
マイケルミッチェルがかなりフィーチャーされており、その他の曲でもソロを取っていたにもかかわらず、「No Mystery」でも長いソロ。
ここまで来ると、スタクラはかなりマイケルを鍛えようとしている気がした。
OJT。実戦演習である。
ヴォーカルのナターシャは1曲のみ。
他のセットではもっと歌っているのかもしれない。
存分に楽器超人たちの演奏が楽しめたので文句ナシだけれど、彼女の歌をもう1曲くらい聴きたかった。
終演後、、、
スタクラとナターシャ以外の3人がバーカウンターで寛ぎ、談笑。
昔、御大マッコイ・タイナーはバーで葉巻を吸って酒を飲み、寛いでいたものだし、
ハービー・ハンコックにしろ、メセニーでさえも出てきて談笑していることもあったが、最近のブルーノートではサイン会以外ではアーティストが出てくることも少なくなっていただけに、なんだか懐かしくなった。
さすがに若い3人は、今後のブルーノート登場アーティストTrailerを見てはしゃいでいる。
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