Live鑑賞 〜 John McLaughlin & The 4th Dimension Live at BlueNote Tokyo

2014年3月23日。

John McLaughlin & The 4th Dimension Live at BlueNote Tokyo

John McLaughlin & The 4th Dimension
ジョン・マクラフリン&ザ・フォース・ディメンション

John McLaughlin(g)
ジョン・マクラフリン(ギター)
Gary Husband(key,ds)
ゲイリー・ハズバンド(キーボード、ドラムス)
Etienne Mbappe(b)
エティエンヌ・ムバペ(ベース)
Ranjit Barot(ds)
ランジット・バロット(ドラムス)

<Set List>
1.RAJU
2.ABBAJI
3.LITTLE MISS VALLEY
4.SENOR C.S.
5.ECHOES FROM THEN
6.LIGHT AT THE EDGE OF THE WORLD
7.CALL & ANSWER
8.NEW BLUES OLD BRUISE
9.HIJACKED
10.MOTHER TONGUES
11.YOU KNOW, YOU KNOW

マクラフリンを見るのは通算3回目。最初は’90年代、ジョーイデフランセスコ(org)~デニスチェンバース(dr)のフリースピリッツ。2回目は2009年のファイブピースバンド

ファイブピースバンドの時は、チックコリア、ケニーギャレット、クリスチャンマクブライド、ブライアンブレイドといった、それぞれが一国一城の主である人たちなのに、圧倒的な存在感だったのを覚えている。やっている曲がマクラフリンの曲だから、ということもあるが、それだけではない。とにかく「カリスマ性」としかいいようのない異様な存在感なのである。さすがにマイルス門下生というべきか、マイルスから受け継いだその存在感は、チックコリアすら飲んでしまうほどなので、なかなか他に匹敵する人物がいない。

これは多分に風貌や弾きっぷり、メンバーへの指示などのステージングによるところが大きいと思うけどね。
米ローリングストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大なギタリスト100人のうちの一人。

マクラフリンは不思議なギタリストで、所有しているギタリストのアルバムの数で言えばパットメセニーはもちろんのこと、マイクスターンだとかに比べるとはるかに少ないのだが、愛聴盤が多い。
なかでも、高校生の時にデニチェン聞きたさで購入したフリースピリッツの旧ブルーノート東京でのライブの模様を収めたアルバムは今でもよく聴く。
あるいはジャコパストリアス〜トニーウイリアムスとの伝説のTrio of Doomにおける「Dark Prince」など高速道路で運転しながら流そうもんなら一発でスピード違反しそうな勢いのある演奏。テンションを上げたい時によく聴く。
(ちなみにジャコパスやトニーと言った個性のキツい大物相手でもマクラフリンは負けない存在感がある)
逆に言うと、僕の場合はマハビシュヌオーケストラより後の演奏をリアルに聞いてきたことになる。

そんなマクラフリンが確か’95年になるフリースピリッツ以来、自分のバンドでやってきてくれた。
ハッキリ申せばマクラフリンのやる音楽というのは万人が理解出来るものではない。ブルーノート東京はデートとか接待でも利用される場所であるが、間違ってもマクラフリンのライヴに連れて行ってはいけない。
ジャンルに分けるのは不毛でどこまでいってもマクラフリンの音楽!としか言いようがない(だから彼が一音弾けば一発で彼の音、曲調と分かる)のだけれど、敢えて言えばJazzにロックテイストとインド音楽を融合させたもの、まさに『フュージョン』である。

このインド音楽というのがミソで、マクラフリンのインド傾倒は今に始まったことではないのだが、インドの超絶パーカッショニスト ザキールフセインと組んだシャクティなどのバンドを経て、Jazz的要素を散りばめて進化させたバンドがこの4th Dimensionと言えるだろう。

僕が観た23日のセカンドショーは、冒頭からファイブピースバンドの代表曲とも言える「RAJU」で始まった。マクラフリン節全開。これが聞けただけでかなり満足だ。
さらにはフリースピリッツで演奏された「LITTLE MISS VALLEY」や「HIJACKED」なんかが聞けたのも嬉しい。これらの曲をライブで聞けることはもう一生ないのではなかろうか、とすら思った。
とにもかくにもマクラフリン、72歳とは思えぬ早弾きと音楽の推進力。やってることがムチャクチャ若い。

さて、以下よりドラマー目線全開で書く。
インドの要素をさらに明確にさせているのは言うまでもなくインド人ドラマーのランジットバロットである。
もちろん初見。

ラテンの様々なリズムが研究〜発展し、世界的に馴染んできた現在、インドのリズムというのは最後の秘境であると最近思っている。
数学的というか、多種多様かつ難解で僕も全く研究が追いついていないのだが平気で5拍子の2小節ループとか、9拍子とか15拍子とか存在するし、ものによると小数点拍子などもあったりする。
要するに西洋のリズムとか小節割りにムリに当てはめようとするから厄介なのであって、インド人たちはそれをいとも簡単に自分のリズムとして昇華させている。

そんなインドのリズム感とモダンドラミングテクニックを併せ持った男がランジットバロット。
この人、世界的なドラムサイトのDrummers Worldにもまだ掲載されていないのだが、かなりのテクの持ち主である。
チャイナシンバルも含めてバンバン鳴らしまくりの叩きまくりなので、人によっては「うるさい」と言う人もあろうが、元来マクラフリンはトニーウイリアムス、ビリーコブハム、そしてデニスチェンバースと叩きまくり型のドラマーを愛用しているのでうってつけと言えるだろう。僕もこのくらい叩いてくれる人の方が好きである。
ムチャクチャタイトだし、9拍子や15拍子の曲でも涼しい顔してドラムソロをとる。
いやにドラムの音のヌケがいいと思ったら、使ってるセットはSONORだった。
SONORプラスSABIANのシンバル。
誤解を恐れずに言えば、トニーウイリアムスのインド風味現代版ドラマーといったところか。
(追記 その後、早々にDrummers Worldにも掲載された。まぁ当然だわ)

そして、今回あくまでもキーボーディストとして参加しているゲイリーハズバンド。
この人は、キーボードというよりもドラマーとして有名で、この人の方がライブ後にサインを求められているくらいだった。
かのアランホールズワースのうしろで叩いている人である。
この人こそDrummes Worldに掲載されている。
今回初めてキーボードの弾きっぷりを見たけれど、これまた上手いのよなぁ。

さぁそしてステージ上には2台のドラムがスタンバイされていて、曲によっては、2人のドラムバトル。
これまたエゲツない拍子で叩き倒す2人。拍が取れぬ。
リズム好きにはたまらんライブとなりました。

ベーシストのエティエンヌ・ムバペもギターの様にベースを弾きまくり。
マクラフリンのやる音楽に付いてこれるミュージシャンは凄腕でなければ成り立たない。

また、マクラフリンのギターの音はCDで聴くとともすると「線が細い」と思ってしまうときもあるが、久々に聞いてさにあらず。
ライブで聴くとどうしてなかなか太い音。
こういう発見はライブならではだ。

そしてまだまだ世界に浸透していないインド音楽を、一番最先端で引っ張っているのがマクラフリンと言える。
理解出来ないとか難解とか書いたけれど、実際に聞いてみるとカッコいいし、一度ハマればクセになる。
それがマクラフリンの音楽。
このバンドのさらなる進化を見てみたい気もするし、シャクティのようなガッツリインド系の超絶音楽もナマで見てみたい。
老いてますます盛んとは言わせない、現在進行形で己れの音楽創作を続けるマクラフリンを見た!

最新作 Black Light



The 4th Dimensionのライブ盤 Boston Record



The 4th Dimensionの入門盤 Now Here This

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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