Live鑑賞 〜 Chucho Valdés & The Afro-Cuban Jazz Messengers Live at BlueNote Tokyo 2013

2013年11月29日。

Chucho Valdés & The Afro-Cuban Jazz Messengers Live at BlueNote Tokyo

Chucho Valdés & The Afro-Cuban Jazz Messengers
チューチョ・ヴァルデス・アンド・
ジ・アフロ・キューバン・ジャズ・メッセンジャース

Chucho Valdés(p)
チューチョ・ヴァルデス(ピアノ)
Yaroldy Abreu Robles(per,vo)
ジャロルディ・ アブレウ・ ロブレス(パーカッション、ヴォーカル)
Dreiser Durruthy Bombalé(batas, lead vo)
ドライザー・ドゥルシイ・ボンバレ(パーカッション、リード・ヴォーカル)
Rodney Barreto(ds, vo)
ロドニー・バレット(ドラムス、ヴォーカル)
Gastón Joya(double bass, vo)
ガストン・ホジャ(ダブルベース、ヴォーカル)


チューチョヴァルデス。
キューバのピアノマエストロであり、今や世界的に活躍しているキューバミュージシャンの師匠的存在とも言える人物。
’70年代に一世風靡したラテンオーケストラ「イラケレ」からはアウトゥーロサンドバル、パキートデリベラ等々、錚々たるメンツが巣立っていっている。


チューチョを見るのは通算4度目。
前回は2010年3月のミシェルカミロとのデュオであった。
その時も、通常ならとんでもないテクニックのカミロを向こうに回して泰然自若。余裕で受け止めて横綱相撲で圧倒していたチューチョの凄さを見せつけられている。
それ以前の2回は残念ながらこのブログ開始以前になってしまうが、朧げながら記憶を紐解くと、1回目は期待通りのラテンジャズバンドで超エキサイティングなライブ。が、2回目はボーカルをフューチャーしていたためか、あまりチューチョのピアノ&ラテンリズム隊を堪能出来ず。


そんな感じで、チューチョの音楽というのは勿論基本はラテンなのであるが、オーケストラから小さなラテンジャズコンボ、さらにヴォーカルを迎えたものまで幅広い。
しかし中でも僕が見たいチューチョヴァルデスの音楽は、やはりパーカッション部隊を引き連れたラテンジャズ全開!弾きまくり、叩きまくりのラテン音楽サイドのものなのである。


そういうわけなので、今回の編成を見た時に期待を募らせた。
そしてその期待通り、久々にエキサイティングなヴァルデスの音楽を見た!とまずは結論を書いておく。


チューチョヴァルデス。
風貌は「牛」、「牛」というか「水牛」のようである。
デカい。手もデカい。
そして、かなり僕も数多くのピアニストを見てきているけれど、これほどダイナミックで、1人でオーケストラの如くピアノを弾き鳴らし、しかし時に繊細に、高音は蝶の如く舞うように、フォルテッシシモからピアニッシシモまで弾く人を見たことがない。
あと、表現力がハンパないのですよ。
クラシックがベースにあるので、クラシック的弾きっぷりからジャズ、果てはラテン、タンゴ調までなんでもソロに取り入れて弾いちゃう。
今回最前列、目の前で見られる機会に恵まれたのだけれど、なんだか吸い込まれそうになるのよね。
チューチョのために導入された通常ブルーノートに置いてあるスタインウェイよりさらにデカいサイズのグランドピアノを弾きこなすパワー。
70を過ぎて全く衰えずに弾けていることに驚きを隠せない、というか、僕が若い時のヴァルデスを見ていないだけで、これ以上弾けたのだとすると恐ろしい。


誤解を恐れずに正直に言えば、僕はオスカーピーターソンすら越えているのじゃないかと今日のライブを見て思った。
表現力もそうだし、あらゆる編成で音楽を牽引し、さらに今もって創造力を失わずに前進している点も含めてだ。
もちろん、オスカーピーターソンは僕も大好きだし今でも聞けばゴキゲンになる。でも、日本のジャズジャーナリズムが、あくまでも「Jazz」というフィールドにこだわり過ぎたために、これほどなんでも弾きこなせるワールドなピアニストを紹介出来てこなかったんじゃないかと思ってしまうのである。
つまり、ピーターソンやビルエバンスやチックやハービーやキースと同等かそれ以上に扱ってもいいんじゃないか、ということだ。
(現に、僕は2000年代初頭にある有名なジャズ喫茶でチューチョをリクエストしたところ、「誰ですか?それ」と言われたことを忘れない)
難しいところなのだが、ある一定の年代層以上の人たちがJazzという枠をカッチリと分けすぎたんじゃないかとすら思う。
僕の中ではラテンフィーリングは溢れまくっているけれど、今日のチューチョの音楽はJazzだ。
バンド名もそうであるように。
もっと評価されるべき、という点ではミシェルカミロもオマールソーサもしかり。
モダンジャズとは全然違うし、それはそれで好きだけれど、もっと陽性で明るいフィーリングのジャズをやっている。
この時代にラテンにノれない日本人もいなかろう。
そんなに難しい音楽をやっているとは思えないし、むしろモダンジャズよりも分かりやすいかもしれぬ。


客も、なかなかのチューチョファンがいるようで、ラテンのノリも理解し、ラテン語で話しかけたり、曲をリクエストしたり、果ては踊る人まで出る始末。
チューチョはもう何度も来日しているとはいえ、こういう固定ファンが沢山いるのはアジアの中では東京だけではなかろうか。


とうのチューチョは相変わらず泰然自若。
堂々と弾きまくる。
連れて来たミュージシャンは皆自分より一世代以上は若いミュージシャンなんだけれども、要所はビシッと締めつつも、基本的には受け止めて自由にやらせる。自由に音を出させてもらっているのは若手の顔を見れば分かる。楽しそうに音を出して、チューチョと音の掛け合いを楽しんでいる。
そういう活きのいい若手を受け止める度量というか、今でも丁々発止にやり合える70過ぎのチューチョが何ともカッコいいのよね。
あとは曲のメロディーがまたカッコいいのもあり、切ないのもありで、けっこう日本人には合う所があると思う(同じ島国だから??)。


一緒に来た若手たちはもちろん初見で、全然知らない人たちばかりだったのだけれども、皆上手い。
難解なチューチョの曲、キメもビシッと決まる。
中でもドラマーに触れておかざるを得ないでしょう。
ロドニー・バレット。
僕は知らなかったし、日本でもまだまだ認知度も低いと思うけれど、さすがにチューチョが連れてくるだけあってムッッッチャクチャ上手い。
なんでもキューバのスタジオセッションで若手の中ではファーストコールドラマーらしい。
いや、それも頷けるし、これからもっと売れて世界に出て行くんじゃないかと素直に思いました。
まだ海外の有名ドラムサイトDrummer’s Worldにも出てないけどね。確実にそのうち出てくるんじゃなかろうか。
だいたいもともと僕はオラシオヘルナンデスしかりアントニオサンチェスしかり、中南米系のドラマーの異常で壮絶なリズム感には舌を巻いてきたけれど、ロドニーもそんな感じ。
涼しい顔して叩きまくる。タイト。
高速の15拍子でソロ取って、その中でスリップビートまでやらかすからねぇ。怖いわ。
未だ見ぬ強豪が世界にはゴロゴロいますね。


ダブルアンコールも含めて1時間半強。
濃密で最強なラテンジャズの夜。


2年ぶり、表参道のイルミネーション



チューチョ、全開のライブ盤はこちら

Live At The Village Vanguard

コメントを残す

Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

アーカイブ

Produced by Get a life