Live鑑賞 〜 Paul McCartney “Out There” Japan Tour Live at 東京ドーム

2013年11月18日 月曜。

Paul McCartney “Out There” Japan Tour Live at 東京ドーム

Paul McCartney Band
ポールマッカートニー バンド

Paul McCartney(b,gt,p,key)
ポールマッカートニー(ベース、ギター、ピアノ、キーボード)
Paul ‘Wix’ Wickens(Key)
ポールウィケンズ(キーボード&いろいろ)
Rusty Anderson(G)
ラスティアンダーソン(ギター)
Abe Laboriel Jr(Ds)
エイブラハムラボリエルジュニア(ドラムス)
Brian Ray(G)
ブライアンレイ(ギター)


子供の頃から数々のライブを見てきた。
小学生ながらに衝撃的なライブだったのは、1987年10月、今はなき大阪球場におけるマイケルジャクソンのBad World Tourを見た時だ。
中学3年、初めて大阪ブルーノートに行きジャズという音楽に出会う。
もっとジャズのライブを見たくて大学は東京を目指した。
18歳で上京してからはブルーノート東京に足繁く通い、もう今は亡くなってしまって二度と見られないジャズマン達を数々見てきた。


そんなキラ星の如きアーティストたちと比べても、そして今後僕が死ぬまでに見る様々なアーティストたちと比べても、人類の音楽への貢献度を考えた時に今宵見たポールマッカートニー以上の人物は出てこないのではないか。そんな気さえする。
それほどに、音楽界の最重要人物の1人であり、まさに人間世界遺産。
今までの来日時には見れていないだけに、今回は万難を排して東京ドームへ向かった。


もう以下のセットリストを見るだけで感涙ものである。
ポールの名前を知らなくても、曲名を知らなくても、1曲もメロディーを知らない人は日本人にはいないのではないか。

<セットリスト>
1.Eight Days a Week
2.Save Us
3.All My Loving
4.Listen to What the Man Said
5.Let Me Roll It
6.Foxy Lady
7.Paperback writer
8.My Valentine
9.Nineteen Hundred and Eighty-Five
10.The Long and Winding Road
11.Maybe I’m Amazed
12.I’ve Just Seen a Face
13.We can Work It Out
14.Another Day
15.And I Love Her
16.Blackbird
17.Here Today
18.New
19.Queenie Eye
20.Lady Madonna
21.All Together Now
22.Lovely Rita
23.Everybody Out There
24.Eleanor Rigby
25.Being For The Benefit Of Mr.Kite!
26.Something
27.Ob-La-Di,Ob-La-Da
28.Band on the Run
29.Back in the USSR
30.Let It Be
31.Live and Let Die
32.Hey Jude
——————————–
33.Day Tripper
34.Hi,Hi,Hi
35.Get Back
——————————–
36.Yesterday
37.Helter Skelter
38.Golden Slumbers
39.Carry That Weight
40.The End


例えばジャズのアーティストなんかだとライブが全編本人のオリジナル曲の場合、そのアーティストのファンでない限りオーディエンスが曲を知らないなんてことは多々ある。
そんなオリジナルまみれのセットリストの中で、スタンダード曲が1曲でもあると安心したりする。


ところがポールのライブの場合、やってる曲は全編本人のオリジナルなのだが、そのオリジナルそのものが世界的なスタンダードばっかりなのだから恐れ入る。
他のあらゆるジャンルのアーティストがカバーしたりコピーするようなスタンダードだらけ。
みんな英語を知らなくたって鼻歌でメロディーを口ずさめてしまう。
この辺がライブのエンターテイメント性は別としてマイケルジャクソンと違う所だと思う。
メロディーが普遍的で色褪せない。そして誰でも歌える。
こと、日本においては47都道府県単位で見ても、1日で1度もTVラジオCM有線カラオケ等々でポールの曲が流れない/唄われない日は未だかつてないのではないか。まして町のオッサンが唄う鼻歌も含めればなおさらだ。


さてとにかく東京ドーム。ビッッシリ人が入り、超満員。
僕はジャニーズのライブにドームへ行ったことがないので、あそこまで超満員のドームを見るのは初めてくらい。
K-1の全盛期くらい(?)びっしりであった。
客層は高めだけれど、それでも若い人、子供もいる。


ライブのエンターテイメント性としては高くはない。
人がいっぱい入るからドーム、というだけであって、花道があるとかゴンドラがあるとかドームならではの演出なんかあるわけがない。
広すぎるドームゆえにデカいモニタービジョンとあとは花火や照明なんかの演出が少しある程度。
でもね、それも楽曲が有名すぎて皆が口ずさむから勝手に体が動いて楽しんでいくのです。
ヘタに盛り上げようとするよりも、楽曲によって勝手に盛り上がっていくという構図。


あらかじめ断っておくと、僕は常日頃からビートルズやポールの曲を聴いているわけではないし、もちろんビートルズのリアル世代でもない。
ポールファン/ビートルズファンからすると怒られてもおかしくないくらいの知識しか持っていない。
だからポールについて評したり、過去と比べたりも出来ない。
ただ、音楽を愛する者としてポールを生で見て聴いておきたかった、というに過ぎない。
その上でポールについて少し書いておくと、本当に、本当に元気で若々しい人だと思った。
とても71歳に見えない。
コンサート中、殆ど曲間のMCもなく出っぱなしの歌いっぱなし。休みなし。
声もよく出ている。


そして、この人は作詞作曲をこなす“アーティスト”でありながら、根っからのミュージシャンなんだなと思った。
とにかくマイクで歌だけ、ということが無い。
常にベースはもちろん、エレキ/アコースティックギター、ピアノ、キーボードなどを弾きながら歌う。
それでいていい意味で天才肌っていう雰囲気が無い。
ともすると天才系の人って内向的かつ閉鎖的な雰囲気を持って、自分の内へ内へ入る人もいるのだが、ポールは常に陽気だ。元気いっぱいだ。みんなのポールなのである。
そんな事も凄いなぁと感心した。


外人さんにありがちな太っていることもない。むちゃスリム。
それが健康を維持している秘訣なのか。だから元気なのか。
夭折していく偉大なアーティストが多い中、ポールだけは神が選んで生かせているのか?と思わせられた。
レノンもハリスンもこの世にいないけれど、ポールが生きててくれて良かったなと。


全曲解説なんて出来ないけれど、個人的には「Let it be」が一番グッときました。
今の自分の境遇も合わせてね、let it beですね。
そして個人的に一番聴きたかった「Blackbird」をギター弾き語りで歌ってくれたのはこれまた感涙もの。
さらに、「福島の被災者の方に捧げます」として歌った「Yesterday」も、これまたグッとくる。
「Ob-La-Di,Ob-La-Da」や「Hey Jude」は皆で大合唱(東京ドームの外まで響いていたでしょう)。
「Back in the USSR」なんか全然古くないもん、今聴いてもムチャクチャカッコいいし盛り上がる。
「All My Loving」も「The Long and Winding Road」も「Paperback writer」も
「And I Love Her」も「Lady Madonna」も「Eleanor Rigby」も
「Day Tripper」も「Get Back」も「Golden Slumbers」も
みんな生で聴けて良かった!と思う曲ばかり。


’60年代くらいの日本においては、まだ演歌とか歌謡曲と言われるものが一般的であって、そこへビートルズのこれらの楽曲群が輸入されてきた時の衝撃たるやとんでもないものだったのだろうと思う。
僕はリアルにそれを体験出来ていないけれど、今聴いても古くない作品群たちがそれを物語る。
今聴いても古くない、というより今の人たちが創る楽曲がポールやレノンの楽曲に影響を受けて創られているのだから元の土俵が同じなわけなんだよね(親⇒子⇒孫⇒ひ孫世代になってきているだろうけれどね)。


そんな「元祖」であり「本家」であるポールなんだけれど、齢70を越してまだ新しいアルバムも発表し、そのアルバムからも何曲か演奏しておりました。
元祖がまだまだ精力的過ぎるくらい創造を続けているのだから、あとに続くあらゆる音楽家は刺激受けまくりでしょう。
創造しないわけにいかないでしょう。


正直音響のよろしくない(というより最悪な)東京ドーム。
の割にスタッフの頑張り?もあってかそれなりには聴けました。
でも演奏する側は大変だろうと思う。
なにしろ客が遠過ぎて、音の反響も変過ぎて、客の手拍子なんかアテに出来ないもんね。
でも、そんな会場でやることに慣れているかもしれないとはいえ、ポールもバックバンドもジャストなんですわ。
これには感心。
バックバンドも皆凄腕。演奏きっちり。さすがにミュージシャンとしても一流のポールが選ぶだけのことはあり。


ドラムはエイブラハムラボリエルジュニア。
フュージョン系では著名なベーシスト、エイブラハムラボリエルの息子。初見でした。
親の七光りかと思いきやこの人、トップドラマーしか載っけられないサイト「Drummer’s World」にちゃんと名前が出ている。
ポールより太ってる。でもよく動くし、コーラスもきっちりこなす。さすが。



グッズ売り場は大混雑。ライブ終了から1時間以上経ち23時を過ぎてもまだこのくらい人がおりました。
売り場へ入るためにも長蛇の列。



今回のライブは
【公演中の写真撮影に関しまして】として、

携帯電話、ipadなどのタブレット型メディアプレーヤー以外での写真撮影は禁止させて頂きます。
いずれもフラッシュのご使用、動画の撮影は禁止させて頂きます。

となっており、けっこう皆スマホで写真を撮っておりました。
ま、そんな感じで撮った一枚。



みんなのポールマッカートニー、と上記したけれど、撮影OKとか先日ポールが相撲を見に行った際にもサインに気軽に応じていたとか、本当に開いた人だなと。
嫌がる人はとことん嫌がるのにね。
Youtubeなんかにも殆ど全ての曲がアップされているし、今年のライブもアップされたものが多い。
ジャズ系のアーティストも削除されることなくいっぱいアップされている。


そういう状況を見ていると、日本の閉鎖的な音楽環境はどうよ?って心底思う。
その人の創る音楽を広めるためにも、版権がどうとかセコいこと言ってないでYoutubeとかにもっともっとアップさせていけばいいのにね。
音楽や文化ってそうやって広まってきたんじゃないの?
世界に広めるための最適なツールがこうして登場してきているのにね。
Youtubeはおろかネット配信すら全くやらない日本のアーティスト環境を憂うものです。


世界の音楽を変えたポールマッカートニーが、まだまだ創造力を失わずに前進し、さらに世界に開いて自分自身を発信していくのに積極的である生き様をまざまざと見せつけられた貴重な一夜。
忘れられないライブとなりました。

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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