幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]
2017年8月30日。2nd Show。
The Corea / Gadd Band Live at BlueNote Tokyo 2017
The Corea / Gadd Band
ザ・コリア・ガッド・バンド
Chick Corea(p,key)
チック・コリア(ピアノ、キーボード)
Steve Gadd(ds)
スティーヴ・ガッド(ドラムス)
Lionel Loueke(g)
リオーネル・ルエケ(ギター)
Carlitos Del Puerto(b)
カリートス・デル・プエルト(ベース)
Luisito Quintero(per)
ルイシート・キンテーロ(パーカッション)
Steve Wilson(sax,fl)
スティーヴ・ウィルソン(サックス、フルート)
<Set List>
1.HUMPTY DUMPTY
2.CHINESE BUTTERFLY
3.THE ONE STEP
4.CHICK’S CHUMS
5.SPAIN
マックス・ローチやエルビン・ジョーンズ、トニー・ウイリアムスといった今は亡きレジェンドから現代の若手まで、スーパードラマーたちを見れるだけ見てきたこの20年強。
(アート・ブレイキーの生前最後のライブの次の日が、私のブルーノートデビューの日。だからブレイキーは終ぞ見ていない)
これだけ見てきてなんで?と思われるかもしれないが、死ぬほど見るチャンスはあったのに、スティーブ・ガッドは今回が初めてである。
この際なので、ガッド論を少し。
別にガッド入りの曲を聴いてきていないわけではなく、今は亡きアル・ジャロウの「マシュ・ケ・ナダ」は何度聴いているか分からないし、実際この曲におけるラスト8小節の盛り上がりはガッドドラミングにおける真骨頂の1つだ。
或いは音源発売はされていないものの、エリック・クラプトン日本公演における「チェンジ・ザ・ワールド」のガッドもカッコいいったらありゃしない。
にも関わらず、なぜ今までガッドを見たいという食指が動かなかったのか。
ガッドギャングやガッドバンドがあるにも関わらず、だ。
それはドラマー的観点で言えば、誤解を恐れずに言うと、彼が派手に叩きまくるタイプではないこと、がある。
これはもう好みの問題と思って頂いていいけれど、彼のドラムは職人的で、ピアノトリオだったり歌伴だったりの時こそ映える気がしてならないのである。それがまた後ろから煽り倒すというドラミングではなく、ピンポイント攻撃で美味しいフレーズを叩き込んでくる良さ、なのだ。だから、共演者でかなり変わるのではないかということ。
これ、表現が難しいところなのだが、要するに「手数の面で」と考えて頂ければいい。
デニチェンにしろ、ウェックルにしろ、アントニオ・サンチェスにしろ、オラシオ・ヘルナンデスにしろ、どうやって叩いてるのか目の前で見て感じたい、というのがあるのだが、ガッドは恐らく映像と同じだろう、と思ってしまっていたのだ。
(そんな意味で、唯一「ライブで見ておきたかった。。」と悔やむのが、ミシェル・ペトルチアーニ~アンソニー・ジャクソン~そしてガッドのトリオ。もう二度と見ることはできない。。。)
もう1つ、音楽的な観点で言えば、ガッド個人の嗜好でリーダーとして演奏する音楽にはさほど面白みを感じない、ということもある。
そこでチック・コリアである。
老いてますます盛ん、と言ったら怒られそうだが、手を替え品を替え次々と新たなプロジェクトでやってくる。
そして、この春に行われたエレクトリックバンドは言うに及ばす、この人は様々なミュージシャンと絡むし、そのミュージシャンのパワーを最大限に引き出すリーダーとして超重要な力も持ち合わせている。
Live鑑賞 〜 THE CHICK COREA ELEKTRIC BAND Live at BlueNote Tokyo 2017
今さらガッド相手に力を引き出すも何もあったもんじゃないが、むしろ「ガッドと共に」、他の選りすぐりメンバーの力を引き出して、新たな音楽を作ろうとする姿勢に共感。
しかもそのメンツが、ハービー・ハンコックのもとで進境著しかったリオーネル・ルエケや、カリートス・デル・プエルトなど昨今のJazz/Fusion界隈で名前を聞く連中ばかりなのでどんな化学変化が起きるか、期待しつつブルーノートへ。
さて、ついに目の前で見たガッドのドラミング。
ライブこそドラム‼︎というのは前々から言ってきたことだが、上記した「わざわざライブで見なくとも、映像と同じだろう」という考えはやっぱり違った!ごめんなさい!というのが正直なところである。
なにしろ力強い。
まだまだ爆音で叩き切る。
トニー・ウイリアムスのドラムは「太鼓を叩いてる」という感じであるが、ガッドの場合は「ドラムを叩き倒す」という感じか。
で、これも上記したように、今まで見てきたようなドラマーたちの超絶テクニックとは違う、ということは想定通り。
高速ストロークをするわけでなし、基本的なルーディメント、とりわけ手足を組み合わせたパラディドルを主体として叩き切っているだけの話である。
と、文字で書けば簡単なのであるが、、、このシンプルな味がなかなか出せたものではなく、だからガッドのドラムはシンプルだけどパワフルでカッコいいのである。
隣で演奏するパーカッションのルイシーロ・キンテーロ(彼を見るのは6年前のキップ・ハンラハン以来)が楽しそうに笑顔でガッドを見つめる表情がたまらない。
そして、ルエケもウィルソンもプエルトも伸び伸びと自由にソロを取りながら、チックやガッドの音楽的一挙手一投足を学び取っている空気がある。
何度聞いたか分からない「HUMPTY DUMPTY」も「Spain」も新たなメンツで新たな地表を開いていた。
3月のエレクトリックバンドは完成系のその先、という感だったが、こちらのバンドはまだまだ荒削りで実験的側面も持ち合わせながら新旧の曲を織り交ぜて創造している過程の中、という感じだった。
そして、もう一度言うと「あっぱれ、ガッドドラミング!!」である。
コメントを残す