Live鑑賞 〜 Kenny Garrett Quintet Live at Cotton Club

2013年11月3日。

Kenny Garrett Quintet Live at Cotton Club

Kenny Garrett Quintet
ケニー・ギャレット・クインテット

Kenny Garrett(sax)
ケニー・ギャレット(サックス)
Vernell Brown(p)
ヴァーネル・ブラウン(ピアノ)
Corcoran Holt(b)
コーコラン・ホルト(ベース)
McClenty Hunter(ds)
マクレンティ・ハンター(ドラムス)
Rudolph Bird(per)
ルドルフ・バード(パーカッション)


よく見ている気がするのだが、調べた限り前回は2009年のチックコリア〜ジョンマクラフリンの双頭バンド以来、ケニー個人名義では2007年2月以来とあるから6年ぶりである。

それにしても休日ということもあってか、有名なミュージシャンとしてはケニーしか来てないのによくお客さんが入っていたなぁ。

僕の中で「このミュージシャンのライブはハズレなし、手を抜かない」という人が何人かいるけれど、ケニーギャレットはまさにそのうちの1人。
今回も一切手抜きなしで、しっかりと吹きまくってくれた。
しっとり系じゃなくて、吹きまくる系のジャズサックスが聴きたいなら、間違いなくケニーはオススメ。
そして、現在進行形の活きのいいジャズを聴くならこの人でしょう。


さて、ステージングはこの人のいつものパターンで、ラテン系の曲に始まり、超高速スピードのストレートアヘッドなドジャズあり、バラードあり、ファンク系あり、と様々なリズムの楽曲を聴かせた上で、最後は客席総立ちで歌うという、おおよそジャズサックス奏者のそれではない。だから客も楽しめる。
中でも圧巻は、2曲目に演奏した超高速のドジャズで、あの手の演奏はやっぱりそこらの日本人ではちょっとやそっとでは出来ないよなぁ(黒いフレージングも含めて)と思わせる。
そしてナマのライブだからこその疾走感。
アレを延々やられるのもツライけど、客ももう少しああいうのを聴きたかったんじゃないのかな。
その意味ではあと1曲、2曲ストレートなジャズを聴きたかった感じ。
でも、どの曲も全力投球で吹きまくってくれるので、満足感はあり。


ケニーの曲、或いはフレージングというのはスピリチュアルなニュアンスが含まれる。
ともするとアーティストによっては、そういうのを延々と聴かせる人もいて退屈してくるのだが、ケニーはそのあたりの匙加減がよく分かっていて、どの曲も適量で終わらせる。
だから客は飽きずに聴ける。
そういう意味でもいいよね。

日本贔屓のケニー(日本語も話せる)。
以前のライブだと、1人で「赤とんぼ」や「荒城の月」や「翼をください」なんかを吹いてくれて、それはそれはジーンときたものだけれど、今回それはなくて残念。
ステージングのアクセントとしても良かっただけにやって欲しいところ。
ピアノとのデュオでもいいからさ。


さて、ケニー以外は僕は全く知らないミュージシャン。
海のものとも山のものともつかぬ、である。

ドラマーのマクレンティ・ハンター。
ケニーは古くはジェフワッツに始まり、ブライアンブレイド、そして最近だとクリスデイヴ、ジャマイアウイリアムスと、いわゆる叩きまくる系のドラマーと絡むことが多い。
また、ジェフワッツやブライアンブレイドはもともと有名だったが、最近はクリスデイヴにしろジャマイアウイリアムスにしろ新人を発掘し、出世させている(クリスデイヴに至っては先日ビルボードで個人名義でライブを行うまでになっている)。


そんな中でのマクレンティ。果たしてどんなドラマーなのか。
結論から言えば、やっぱりケニーの大好きな叩きまくる系のドラマーであった。
いや〜コロコロコロコロよく叩く。(コロコロコロコロ……という形容が一番似合う)。
粒がハッキリしているし、ソリッド。
その上、あらゆるリズムに対応できる。
まだまだ強豪がいるよね、世界には。
もっとも、叩き過ぎる、とかもっとリリカルでメロディアスなドラミングをのぞむ人には嫌われるかも。
でも、僕はケニーの音楽にはこれが合うと思う。
まだまだこれからの人だろうから(年齢不詳だが)、荒削りなのはご愛嬌。
まだ全体の音を完全に把握出来てない感じも。
そういう意味ではソロもやや一本調子で着地しない部分もあるけれど(いや、十分上手過ぎなんやけどね)、そんなのは経験積んでいけばもっとよくなっていくでしょう。

この人、超高速の4ビートでも絶対レギュラーグリップにしない。
マッチドのまま。
恐らくコロコロ高速でタム回しするためなんだろうけれど、そういうスタイルも含めてあらゆるリズムを身につけた、新世代のドラマーの1人やね。
疲れ知らずで、ずっと叩き続けてた、今ライブの功労者の1人。
ドラムはヤマハ。シンバルはセイビアン。


パーカッションのルドルフ・バードは存在感はあったけれど、特にパーカッションソロがあるわけでもなく、消費カロリーはドラマーのマクレンティとは雲泥の差。
ケニーのバンドにしては珍しいパーカッション付きだっただけに、マクレンティとの掛け合いとかも見たかった。

ピアノのヴァーネル・ブラウンもこれまた弾きまくりの人。
ケニーと壮絶な掛け合いも。

叩きまくり、弾きまくりの2人に比べてベースのコーコラン・ホルトはソロすらなく、ちょっと可哀想。
でもしっかり屋台骨を支えていたね。


5人なんだけれども、なんだろう、コットンクラブの音響がいいからなのか、PAの工夫なのか、はたまたエフェクターのかけ具合なのか、単に個々の音量がデカいだけなのか、やたら音圧があった。
やたら倍音が鳴ってる気がするのよね。
これがエフェクターじゃなくて、個々の力量だけでやってるのなら凄いわ。

ステージング自体は前回の方が良かった気もするけれど、総じてやはり「ケニーギャレットのライブにハズレなし」を実感させ、さらに最近は新人紹介の場とも化している、今後にも多いに期待の現代ジャズの牽引者なり。


最後に一点、あまりこういう事は書いてきてないけれど、今回は目に余ったので。
ブルーノート系のスタッフは、総じてあまり接客が良いわけではない。
高級なフンイキだけは出そうとしているけれど、その実はバイトだったりするので、それは安い給料だろうしムリもないよな、とこちらも甘くみている(でも、客層的には許さない人もいるだろうね)。

ただね、今回のコットンクラブの接客は。。。
頼んだドリンクの置き方。
オーダーしたものが1時間以上たっても来ない(しかも途中で一回確認している)。
シェアして持ってきてね、と言っているのに持って来ない(これも1時間以上経って演奏が始まってから)。
最後に盛り上がっている時に演者が客をステージに上げて一緒に踊ろう的な感じで言っているのに、強引に止める(セキュリティの問題なのか何なのか意味不明。おかげでヘンな空気になった)。

これをあちこちでやってるとすると、丸の内の接待で来てる客なんかは取りこぼしていくよ〜〜と思いましたね。
改善求む、です。




ドラムのジェフ・ワッツがキレまくる1曲目から聴きどころ。

Songbook


サックス〜ベース〜ドラムの編成で表現を追求した秀作。こちらもブライアン・ブレイドがキレる。

Triology

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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