Live鑑賞 〜 Steve Smith and Vital Information Live at Cotton Club 2013

2013年2月1日。

STEVE SMITH and VITAL INFORMATION – 30th Anniversary Tour –
featuring Steve Smith, Tom Coster, Baron Browne & Vinny Valentino Live at Cotton Club

スティーヴ・スミス&ヴァイタル・インフォメーション – 30th Anniversary Tour –
フィーチャリング・スティーヴ・スミス, トム・コスター, バロン・ブラウン&ヴィニー・ヴァレンティノ

Steve Smith (ds),
Tom Coster (key, accordion)
Baron Browne (b)
Vinny Valentino (g)

スティーブスミスを見るのは、2007年のブルーノート東京、マイクマイニエリのライブの時以来2度目である。
なかなか日本に来てくれない。
今回は自己名義のバンド バイタルインフォメーションでのライブ。

スティーブスミスのドラミングは、スティーブスミスらしい、スティーブスミスしか叩けない個性があるのだが、やはりそこは白人であるので黒人特有の粗さや黒さはない。
凄くキッチリと教科書通りである。
この教科書通りというのが曲者で、ともすると面白くないイメージがあるのだがスティーブの場合は基本を踏まえた上で「お見事」と言わせる個性をキッチリと魅せてくれる。
これはまたデイブウェックルのソロの美しさとはまた一味違う美しさである。

片方の手で16分音符連打とか当然お手の物なのであるが、とにかくどんな動きをしていても手足の動きにムダがなくムリがなくしなやか。
とても美しいフォームで叩きまくるのである。

僕の今までの人生の中で一番気持ち良い音のしたドラムと言えば、高校の時に名古屋のサタケドラムショップで行われたドラムセット試打会で叩いたスティーブの使用済みドラム(ライブ後にそのまま持ってきたもの)。
もちろんソナー製。
あの鳴りの良さ、叩き心地の良さは忘れられない。
もちろん今回のライブもソナー製。
ロックからジャズまでなんでもこいのスティーブだが、今回はフュージョンのため口径は小さめ。

さて、肝心の音楽なのであるが、ドの3乗くらいつくフュージョンであった。
エグいフュージョン。
この3月はトライバルテックがブルーノートに来るし、ここにきてのテクニカルフュージョン推しはなんなんだ。

1つ。こうしたテクニカルフュージョンだと得てして演奏者のテクニックひけらかしというべきか、一部の楽器好き/フュージョン好きしか大喜びしない展開(1曲の演奏が延々と長かったりなど)になりがちだが、このバンドはとても1曲をコンパクトにまとめ聴きやすくしていたことに好感。もちろんフュージョン好きは大喜びの内容。

2つ。この手のバンドの場合、その気になれば学生サークルでコピーできちゃう感じに仕上がっていたりするけれど、演奏そのものはとてもじゃないけど学生レベルでマネの出来るものではない代物だったということ。紛れも無くプロの技の数々(特にドラムのスティーブ)。

3つ。スティーブは随所に難解なインドリズムを取り入れたソロを披露。インドのリズムに関しては細かくここに記さないが、15拍子とか或いは小数点拍子とか、数学的にすら思えてくる独特のリズム理論である。そしてリズムへの考え方がとても輪廻的である(これは宗教観から来ているものもあると思われる)。まだまだ世界には広まっていないが、とても深遠で新しい音楽世界が広がっている気がする。

キーボードのトムコスター筆頭にギター、ベースともに皆真剣に良い仕事をしていた。が、ギターのヴァリーヴァレンチノのソロをもっと聴きたかった。スティーブとトム目当ての客が多いから遠慮がちなのは分かるが、もっと聴きたいと思わせるギター。
あとはトムコスター。グラサンで何回もドヤ顔をするのはおもしろすぎです。そこまでドヤ顔するほど活躍しておりませぬ。

金曜の夜だったのか、そこそこ客も入っており盛況。
こういうフュージョンなら、何にも分からない人が見ても「凄い!」って思えるんじゃないか。

数年前のオマーハキムの時もそうだったが、コットンクラブのステージ右に位置するカウンター席(僕は審査員席と呼んでいる)に向けて、今回のようにドラムの全体像が見えるようにセッティングしてくれると一挙手一投足が見えてドラム小僧にはそこらのレッスンを受けるよりはるかに勉強になると思う。
そしてオマーといい、スティーブといい、一生懸命叩いてくれるしね。
こうしたブルーノートでは実現出来ない感じのセットを増やしてください、コットンクラブさん。

では最後にスティーブのしなやかな手足に注目、タイム感のハンパないドラムソロを。




Live! One Great Night

コメントを残す

Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

アーカイブ

Produced by Get a life