運河

久しぶりに気分のいい私は、夕食をとるために外に出た。

さっきまで激しく降っていた雨はほとんど上がっている。

風で乾いて行く雨の匂いが好きだ。

通りに出て、ふと気づいた。

湿度が高いせいだろうか。

潮の香りがする。

普段は忘れているけれど、この辺りは埋め立て地。

明治に入るまでは海だったのだ。

神戸で育ったせいだろうか。

海の近くばかり選んで住んでしまう。

ここに引っ越す前の家も考えてみれば10分も南下すれば海のそばにいけるところだった。

海を普段は意識しなかったけれど、天気が良いとたまに、港の公園に一人で行ったりしたものだ。

あるいて5分とかからない駅から京浜東北線にのると35分くらいで横浜。

山手線で池袋にいくのとたいして変わらないので、よく一人で横浜に行く。

なんだか、落ち着く感じ。

港町が好きなのだ。

そういえば海ではないけれど、トロントに住んでいたときもウォーターフロントに近いエリアに住んでいた。

とはいえ、あっちは大きな湖。

これは後付けかも知れない。

 

そんなことを考えながら海の香りのする運河をわたり、俺はいつもの店へ向かった。

それにしても、今夜は気分がいい。

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