飛騨の小京都 高山。
「小京都」とされている町がいくつかるかご存知か?
実に全国に50ある。
どこも珠玉の町だ。


しかしこの高山という町、古都の町並み、市内中心を流れる宮川、東山地区、高山城あたりからの眺めなど、
京都ほど大きくはないけれど「あ、京都と似ている」と本当に思わせる。
上品で粋な町並みであり、春秋の高山祭りは大いに賑わう。


さてそんな高山に名旅館は多かれど、本陣平野屋の名は全国に轟くといっても過言ではない。
この宿、いわゆる純和風の佇まいというわけではない。
内装設備に至ってはむしろ先進的である。
よくよく鑑みると、突出した特長があるわけではないのだけれど、到着から出発まで宿泊客は安心して過ごせる。
そう、それは一言で言えば「スキがない」。


本陣平野屋 花兆庵


花兆庵の料理プランの一つである「美味求真」を一度賞味してほしい。
美味しくて笑みが出るどころではない、「笑ってしまう」味がそこにある。


いきなり最初に朝採れキュウリが一本そのまま出てくる。
飛騨の田舎そのままの味をそのままガブリといってほしいという計らいだ。
かじった途端、口中が飛騨の香りに包まれるだけではない。
「キュウリってこんな味だったんだ」という今更ながらの感覚に囚われ、続いていく料理への期待感が高まる。



A5等級飛騨牛が美味しいのは言うまでもない。
口に入れると深く息をしたくなる味だ。
勝手に口中で肉が溶ける感覚。
別注の飛騨牛にぎりも一度は口にしたい味だ。


A5等級飛騨牛



飛騨牛のにぎり



朝食も工夫が加えてある。
朴葉味噌焼きなど、朝からご飯がススム。
味噌がパチパチと小さな音をたてながら焼かれていく様がよけい食欲を誘う。


日常とは違う、かと言って華美ではない、堅実な料理がそこにある。


序論に挙げた「よい宿の条件」をほぼクリアしていく宿ではなかろうか。
女将さんの客のニーズに応えようとする姿勢には感服で、
例えば以前海外からの留学生何名かを受け入れた時に、宗教上の理由などで食の制限が個々で違ったことがあったらしく、その時も全て対応したとのこと。
頭が下がる思いである。


高山陣屋のすぐ近くにあり、宮川のせせらぎを近くに見る宿。
強いて言えば前記したようにこれと言って突出した特長がないということであるが、
全ての面で、ある一定レベル以上のクオリティを兼ね備えた上での「特長がない」なのであり、
むしろそれこそが「世界遺産飛騨」、なかんずく「飛騨の小京都 高山」を前面に立てんがために敢えて一歩引いた形で宿泊客と高山との仲介役を果たしているかにも見えるのである。

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャンこのブログでは、私のライフワークである旅、滝めぐり、ラーメン食べ歩き、食レポート、温泉/旅館/ホテルなどについて、徒然に綴っています。→ [ 詳細 ]

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