Live鑑賞 〜 “VOLCÁN” featuring Gonzalo Rubalcaba, Giovanni Hidalgo, Horacio “El Negro” Hernandez & Armando Gola Live at Cotton Club 2014

2014年1月10日。

“VOLCÁN” featuring Gonzalo Rubalcaba, Giovanni Hidalgo, Horacio “El Negro” Hernandez & Armando Gola Live at Cotton Club

“VOLCÁN” featuring Gonzalo Rubalcaba, Giovanni Hidalgo, Horacio “El Negro” Hernandez & Armando Gola
“ヴォルカン”
フィーチャリング・ゴンサロ・ルバルカバ、ジョヴァンニ・イダルゴ、
オラシオ “エル・ネグロ” エルナンデス & アルマンド・ゴラ

Gonzalo Rubalcaba(p)
ゴンサロ・ルバルカバ(ピアノ)
Armando Gola(b)
アルマンド・ゴラ(ベース)
Horacio “El Negro” Hernandez(ds)
オラシオ “エル・ネグロ” エルナンデス(ドラムス)
Giovanni Hidalgo(conga)
ジョヴァンニ・イダルゴ(コンガ)


今でこそ、チューチョヴァルデスだオマールソーサだと、キューバ系ピアニストを多く聴くようになっと僕だが、もともとキューバ系アーティストの凄さを知ったのはゴンサロルバルカバからである。
’90年代前半、当時高校生くらいだった僕は、日本に紹介された彼のデビューアルバム、そしてMt.Fuji Jazz Fesなどの映像を見てその超絶技巧にびっくりしたものだ。
そんなゴンサロルバルカバが久々に新結成したグループがこのVolcanである。

ゴンサロに関して正直に言えば、最初の熱狂がマスコミの煽りも大きかった部分もあって、その後は鳴りを潜めてしまった。
このことは僕の中での話でもあるけれど、日本のファン全体的に、と言っても過言ではなかろう。
誰かに指摘されたのか、或いは本人がそういう方向性に持っていったのか、もともとガンガン弾くピアニストでなかったのかは定かでないけれど、あれだけの超絶技巧を持ちながら、どちらかというとリリカルな方向に行ってしまったのである。
そして「硬いジャズ」「賢いジャズ」の方向に。
大人しくなった、とでも言おうか。

と言いながらも2005年にベースにブライアンブロンバーグ、ドラムにデニスチェンバースを迎えたアルバム「The Trio」なんかはリズム隊の超絶技巧も相まって、なかなか痛快で今でも聴くし、他のアルバムなんかもそれなりには弾きまくっているんだけどね。
個人的にはもっと凶暴な路線に行ってくれると思っていただけに、残念なこの10数年なのである。
あとは、メロディーセンスが個人的にはチューチョやオマールソーサの方が好きということもある。


そんなわけで、彼のライヴは前記したThe Trioで来日した時以来、8年近くぶりである。
今回、なぜライヴに行ったかと言えば、言わずもがな、ドラム&パーカッションを見に、である。
残念ながらゴンサロを見に、というわけではないのが申し訳ないのだが、見た所、他の聴衆の目も、リーダーよりは、ドラム&パーカッションに向いていると感じた。


さて、ドラムは僕の大好きなドラマーの1人でもあるオラシオ“エルネグロ”ヘルナンデスである。
2011年末のキップハンラハンの時以来。
ラテンドラミングの第一人者で、異常以上のテクニックの持ち主。ラテンはもとよりジャズでも何でも来いである。
ラテンでありながらドラミングにはロックの匂いもするところがカッコいい。

キップの時は音楽に忠実に叩く、という感じであり、お得意のラテンフィーリング溢れるドラミングは殆ど見られなかったので、このバンドでは叩きまくってくれることを期待して行った。
で、期待に応えて恐らくミシェルカミロトリオの時かそれ以上に叩きまくってくれた。


ハッキリ言いましょう。
今日の彼のドラミングは、フィーリング的に日本人にはコピるのがムリである。
日本人にはとことん難しいラテン独特の裏打ちのリズムを、両手両足で全部違うことをしながら涼しい顔して叩く。
左足に関しては、クラーベをカウベルで叩きながら、ハイハットを刻み、さらにはツインペダルも動かす、、、つまり3つのペダルを同時進行でコントロールしながら、さらに右足と両手は別作業。。。てなわけである。

↓クラーベの一例

このリズムを恐ろしいスピードで左足で刻んだり、左手でカウベルを叩きながらそれ以外の手足は別の装飾をつける。
彼の世代から、こうした技法は世界的に広まり、今やあらゆるドラマーがやるようになってきてはいるが、「血」から出るフィーリングであったり、ダイナミクス/表現力において、オラシオを越える人は出てきていないとあらためて感じた。


そして、リズム隊と言っても今回のライブにおいては、相方はベースではない。
「世界最速」と言われるコンガの名手ジョバンニヒダルゴである。
この最速コンガとオラシオとの変形リズム隊は強烈。
間違いなく地球上で最高峰のラテンリズムセクション。
オラシオもヒダルゴも涼しい顔して本当に楽しそうに、そして自由にラテンリズムを昇華させ飛翔させるのだからたまらない。

チューチョヴァルデスの名曲「Pon La Clave」の高速バージョンが聴けたのも嬉しかったし、ディジーガレスピーの名曲「Salt Peanuts」も超高速のアレンジで。どちらも痛快。
逆に叙情的な曲はなく、ラテンリズムを全面フューチャーしたステージングもそれはそれでアリでしょう。
ただ、最後にバンドメンバーを紹介した以外は全くMCもなく、演奏のみで魅せるステージなだけに、エンターテイメント性はなし。


結論を言ってしまえば、主観的で申し訳ないけれど、このバンドはドラム&パーカッションを観るものだと言っておく。
ゴンサロも変わらぬ超絶技巧で応酬しているのだが、もっと突き抜けて欲しいところ。
そんなゴンサロを向こうに回して、どうしてもドラム&パーカッションに観客の目は釘付けになっていた。
で、ある程度それを折り込み済みなのか、ドラム&パーカッションのソロ時間を多めに取ってあったし、アンコールでも壮絶なバトルが展開されるシーンがあった。
その意味ではゴンサロは、オーディエンスが何を観たいのかを分かっているとも言えるし、元々4人全員がフューチャーされたバンドなので別段ゴンサロがリーダーというわけでもないのだろうけど、ゴンサロの影が薄くなりつつあるよね。

あくまでも僕的には、一番観たかったものが観れたので大満足。な一夜でした。
しっっかし、神ドラミングだな、オラシオは。
ミシェルカミロともう一度絡んで欲しい。


↓この角度から観れたので、打楽器好きにはたまらない。ヘタなレッスン行くくらいなら、このバンドを見た方が良い。

オラシオは、Pearlのドラムに、シンバルはイスタンブール。あとは自身のシグネチャーカウベルやウッドブロック等。
昔はジルジャンだったのに、イスタンブールに変えたのね。ライド1、クラッシュ2、チャイナ2、シズル付きのスプラッシュ1、クローズドハイハット1。
タムは1タム、1フロアタムのみ。
このセットで、見事に色彩感のあるドラミングが繰り出される。



Volcan

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Writer:オーシャン

コラムニスト:オーシャン幼少の頃より音楽を始めとしたあらゆるエンターテインメントに触れる機会を持つ。学生時代はフュージョン系サークルにもプレイヤーとして所属。→ [ 詳細 ]

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